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265.
ハルが家を訪れた、その翌日。
動物病院からどうやって帰ってきたのか、覚えていない。家に着くなり玄関の床が迫ってきて、俺の意識はそこで途切れた。
延々と流れる着信音に起こされ、目を開く。
「……っ、え…」
開いた、はずだった。
白い。視界を覆うのは眩しいまでの、白。
鳴り響く音楽の中で瞬きを繰り返すも、状況は変わらなくて。半ばパニックになりながら手探りでスマホを探す。
頭の片隅に残っている、どこか冷静な部分が知らせた名前は。
「ハル、っ……」
『お?悪い、寝てた?』
のんびり響く声に、個別の着信音を設定しておいて良かったと息を吐く。
「あの……今から、来られる?」
『え?…どうした?』
途切れがちの言葉。端々に滲む焦燥を汲み取ってくれた友人に感謝しながら、上手く纏まらない思考を落ち着けようと必死に紡ぐ。
「…視力、っていうか…目、見えなくなって。昔も一度あったから、大丈夫……じゃないんだけど、取りあえず病院に付き添っ―――」
「タクシー廻すから待ってろ、俺もすぐ行く」
不通音が響く前、確かに聞こえた頼もしい声音。
念のために瞼を開閉しても、白い世界が変わることはなかった。
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