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266.
辿り着いた総合病院で、幸いにもすぐに診察してもらえた。
「…お帰り。先生、何だって?」
会計を待つ間、隣に居るだろうハルが問いかけてくる。
「短期間に極度のストレスを感じたことがきっかけで、視神経炎を起こしてる…らしい」
「視神経炎…」
「大学受験の時も追い込まれて、同じ症状に陥ったことがある。もう大人だし、それよりは軽いと思う。しばらくすれば治るから入院は必要ないけど、ステロイド剤の治療だって」
瞬きしても、瞼を閉じても。純白に塗りつぶされた世界。
「ストレスって…芹生くん、?」
視覚が断絶されているぶん敏感になった聴覚は、珍しく気遣わしげな彼の声音を捉えて。
「…も、あるけど……」
この先を口にするのが、怖い。自分ですらまだ信じられていないというのに。
「……………ミウが、死んだ」
「は……っ、!?」
ガタリと椅子から立ち上がる振動。そのタイミングで呼ばれた俺の名前に一瞬詰まった彼は、行ってくると言いおいて離れた。
心臓発作。
ただ文字にしてしまえばたったそれだけの、原因。
慢性的なものではないから、そこまで自分を責めることもないと。宥めてくれたのは獣医だったか。
俺にとって、大事なもの。
ひとつずつ離れて行く虚無感に、ただ歯を食いしばるしかなかった。
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