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267.
ハルさんと会ってから、1週間後。6月中旬を迎えたこの時期になると、梅雨にも慣れてきた頃。
『もしもし芹生くん?明日ルイの家行くんだけど、来れそう?』
「明日、ですか……15時以降なら…」
突然の誘いに驚きながら、スケジュール帳を確認する。これは今日中に心の準備をしておかねば、と密かに考えて。
『了解。じゃあルイの最寄り駅まで迎えに行くわ』
「はい…分かりました」
『あー………あと、』
そのまま予定を書き込む手が止まる。
『んん…俺ちょっとルイと先に話したいことあるんだけど、時間貰っても良い?』
「ああ、ミウちゃんのことでしたっけ。大丈夫ですよ」
『…うん。ありがとう』
それは一瞬、不自然でない程度の空白がどうにも気になった。
『じゃあまた明日』
「は、はい…」
聞けなかった、と。もやもやする気持ちを抱えたままスケジュール帳を閉じる。
(…気のせいかな)
たまたまかもしれない。勝手にそう楽観視した俺は布団に潜り込んだ。
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