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「そういう、…?」 ハルにしては珍しく抽象的な言葉に、眉を寄せた。 「ほら、AV貸し借りしたりとか」 「……ああ」 笑みを含んだ声を受け、更衣室を思い出す。そういえば。 「あの日も…話、したかも」 「へえ?」 短い相槌を打って黙り込むハル。沈黙に促されるようにして、ぽつりぽつりと状況を語った。 「後輩が…女優よりうるさい男優の作品見てげっそりしたとか、で。主役がどっちか分からなかったらしい」 「あー…たまにあるよな、しかも男優の方がマイクに近かったりする時なんて最悪」 「ハルも嫌?いくら演技だとしても女優の声の方を聞きたいって主張する後輩と、感極まってれば男優の声メインでも構わないって後輩が揉めてて」 「お前は?」 「正直どっちでも良かったんだけど、白黒はっきりしなきゃいけない雰囲気だったから…男の喘ぎ声なんて興奮材料にならないでしょ、って言ったかな」 「はー……なるほど」 かなり深いため息。目の前の彼が何を考えているのかさっぱりだ。表情が見られないことで、こんなにも不安になるとは思わなかった。 「……分かった。すげえ良く分かったよ」 「ハル?」 「じゃー俺帰るわ、またな」 「えっ、ちょ……」 ぽん、と頭に置かれた手のひらは久しぶりの体温で。立ち上がりかけて、座ってろと肩を押される。 多忙なハルのことだ。突然の行動に少し疑問を抱きつつ、ドアの閉まる音を聞いた。

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