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「本当に、平気?」
ベッドへ浅く腰掛ける三井さんの前に膝を付き、見上げた表情は少し曇っていて。気遣うように撫でられ、目を細めた。
「大丈夫です。……でも、上手くなかったら、すみません…」
答えてから、経験のない自分へ不安が募る。男性と深く関わって、ましてや寝るなんて予想もしなかった事だ。
「気持ちだけで嬉しいから」
撫でる指で顎を掬われ、まるで猫を扱うようにくすぐるその仕草。彼が触れた場所からじんわりと熱が上がったような気分になる。
「…が、頑張ります」
返事を受けて、緩く笑った三井さん。黒のボクサーパンツから現れた性器に思わずひくりと喉を引き攣らせる。普段まじまじ見ることのないそれは、贔屓目抜きにしてもご立派だった。
そろりと指を伸ばして軽く触れてみる。指先で感じる温度の高さに驚きながら、柔く握りこんだ。指の輪を根元から先端に掛けて何往復かすれば、より硬度を増して。
「三井、さん…」
「…っ……、なに…?」
気持ち良いですか、と続く言葉は消えた。見上げた先の綺麗に割れた腹筋。寄せられた眉。閉じた瞼の震えが睫毛に伝わって、浮かぶのは息を呑むほどに色気の漏れる表情。
(……もっと、見たい)
唐突に湧き上がる衝動のまま、吸い寄せられるように口付けて。一層香る独特の匂いも、今は興奮要素でしかなかった。
テクニックなどという高等技術は身につけていない。ただ思うがままに愛撫して、いつも俺を天国へ連れて行ってくれる目の前の存在に感謝を伝えるつもりだ。
体長に見合った長い竿を舐め上げ、先端に舌を這わせる。じわりと滲み出た少し苦い先走りを味わいながら根元を扱いて、段々と張っていく精嚢を手のひらで感じた。
「…ねえ、楓くん」
「は、い……?」
優しく、けれど抗えない力で引き離されて。髪に差し入った指が探るように動く。
「……誰かに、習った?」
全身の血が下がるような、底冷えすら感じる声。
そんなわけ、ないのに。
否定しなければ、と焦っても。喉に貼り付いたままの声は使い物にならなかった。
恐怖と同時に湧き上がるのは悔しさ。付き合ってから今日まで、何もかも三井さんが初めてだというのに、全く伝わっていなかった事実を突きつけられて。
噛んだ唇が切れそうだと、どこか遠い場所でぼんやり考えた。
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