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「俺達、付き合うことになりました」 「えっ」 間抜けな声を上げたのは隣の楓くん。そのまま固まってしまった彼を引き寄せて、目の前の2人に微笑む。 「良かったね」 「色々お騒がせしました…」 頭を下げる細田くんは苦笑い半分、照れ笑い半分といったところで。この子に託した自分の見込みは間違っていなかったと安堵する。 「おめでとう、ございます……っ」 はっと我に返った楓くんが抱きつこうとした先のハル。しかし寸前で動きを止めた後ちらりと隣の細田を見やって、行き場のない手が所在なさげに揺れた。 遠慮しているのがありありと分かるそれに、思わず吹き出したのは俺と細田くん。すると今度はハルが優しく抱き寄せて。ありがとう、と溶ける音は少し湿っている。 「4人の仲でしょ、遠慮しなくて良いから」 ね?と細田くんを見やれば淡い微笑みを返される。ハルに抱えられる楓くんの頭を撫でると、ようやく背に腕を回した。そのまま泣き出してしまいそうな雰囲気に、やっぱり自分の恋人が一番だと脳内で惚気けてみせる。 「…あの、お幸せ、に……」 ようやく離れた楓くんは、たどたどしくそれだけ口にした。愛おしそうに頬を撫でるハルの目に浮かぶのは、恋慕ではなく慈愛のあたたかさ。 そんな顔も出来るようになったのかと友人をまじまじ眺めて、成長させてくれた彼に感謝する。肩を竦めた細田くんは、恥ずかしさからか傍の袋に手を伸ばして。 「……日も暮れましたし、これ。見ません?」 取り出したのは夏の風物詩。恐怖映像の詰まったディスクだった。明らかに顔を引き攣らせた楓くんとハル。これは面白くなりそうだ、とひとりほくそ笑んだ。 「ぎゃあああああぁ…!」 「む、むり、むりいぃ……っ」 映像より何より、暗くした部屋に響き渡る悲鳴の方がよっぽど驚きを与えてくれる。思わず笑ってしまいそうになって、誤魔化そうと視線を送った先の細田くん。彼もまた笑いを咬み殺した表情のまま苦悶していた。 「…そんなに怖い?」 「え…えっ…?何か言いました、?」 耳を塞ぐ楓くんに語りかけるも、涙目で聞き返され。可愛い恋人にそんな顔をされれば、少し意地悪してみたくなるのは男の(さが)というものだろう。 「俺の声だけ聞いてれば、怖くないよ」 両手首を握って耳横から外させる。笑顔を浮かべる目の前の相手をどう思ったのか、ひくりと引き攣る喉。 「そ、っん、な…こと……」 俺の顔と画面を見比べたその時、運悪くの心霊映像にますます震える体。怯える姿はさすがに憐憫を誘う。 「も……っ、ばか、しばらくおあずけ!」 「何をです?」 「…えっち」 拗ねたような様子のハルは、恐怖のあまり俺達が見えていないのだろう。口ではそう言いつつも細田くんにしがみつく手が台無しだ。 楓くんの顔色を窺えば青ざめた色から一転、ほんのり赤く染まる頬。どうにも感化されやすい彼を愛しく思って抱き寄せようとした瞬間。 「……どうしたの?」 ぎゅう、と腰のあたりに顔をうずめて。緩く首を振る、その絹のような髪を撫でた。向かい側では膨れるハルをあやす細田くん。 DVDはエンドロールに差し掛かっていた。

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