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あの小旅行から数日。インターンも終わった、8月下旬。 「…お久しぶり、です」 「うん。いらっしゃい」 訪れるのはもう何度目か分からない、三井さんのマンション。適度に冷やされた室内でほうと息をつく。 「アイスティー、飲める?」 「あ、はい。お構いなく」 隣に座った彼は、俺を見ると眩しそうに目を細める。理由が分からず、傾げた首。その先で繊細な指が踊るように頬を撫でた。 「…日焼け」 「え?ああ…少し、焼けたかもしれないです」 自らの腕を見下ろして呟く。しばらく経てばまた元の色に戻ってしまうから、色素沈着の心配をしたことはない。 伝えようと開いた唇は、彼のそれで塞がれた。 ひとしきり口内を蹂躙した後、そのまま凭れて来る痩躯を受け止めて。ひやりと冷たい髪を撫でる。 「…何かありました?」 「インターン…」 「はい」 「……お疲れ様」 「ど、どうも…?」 質問の答えになっていないような。それにしても、今日の三井さんは何処か変だ。 「…2週間、だっけ」 「そうですね」 頷けば体を起こす。揺れる瞳が子供のようだと思った。そっと躊躇いがちに落とされた、のは。 「………寂しかっ、…た」 緩慢に瞬いて、会得が行く。自分の方が歳上だという手前、なかなか言い出せなかったのだろう。時たま、こうして本当に可愛らしくなる彼の虜だ。 「メールはしたでしょう?」 うん、と半ば唸るように認めて、それでも不満げに尖らせた唇をなぞる。ぐっと距離を縮められ、端正な相貌がぼやけた。 「…君は?」 「俺ですか?」 「……楓、くん」 欲しがる答えは、まだ与えない。わざと焦らせば眉間に皺が寄る。これ以上は己の身が危険だと判断し、宥めるように囁いた。 「寂しかったですよ、俺も」 緩む頬が満足そうな色に染まって、再び落ちてくる口付け。段々と深まるそれに、もしやと思い当たる。 「抱かせて」 ―――ああ、もう遅かったようだ。 建前も何も取り払った、簡潔な。ただそれだけのひとこと。 先ほどまでのしおらしさはなりを潜め、目の前に現れたのはただの狼。欲に濡れた瞳を正面から受け止めてしまえば、胸の奥深くが歓喜に震える。 (…これだから) 目が離せない。 ふ、と思わず笑ってしまう前に。差し出された細い首筋へ縋りついた。

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