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293.
川で釣った魚を食べながらスイカ割りにはしゃぐハルさんを見て、楽しく過ごしたのは少し前。
やりたい放題だと笑っているうちに日が暮れ、夕食のバーベキューもあっという間に終わった。
「食材、多めに用意したけど…良かったね」
「もう…しばらく、肉は見たくないです……」
小ぢんまりとしたログハウス風のコテージに入るなり、ベッドに倒れ込む。さすがに食べ過ぎたかもしれない。
心なしか少し膨らんだように感じる腹部を撫でながら苦笑する。明日は運動しようと決めて起き上がりかけた瞬間。
「…楓くん」
何故か突然スイッチの入った三井さんの様子に、目を白黒させながらも形ばかりの抵抗を試みた。
「えっ……あの、シャワー…浴びたい、です」
バーベキューというものは総じて臭いが付着するらしい。服は脱いでしまうにしろ、髪を洗いたいと瞳で訴える。
「……そうだね」
案外あっさりと引いてくれた様子にほっとして、今度こそ立ち上がった。緩く頬を撫でた指がそのまま下って行く。するりと絡め取られた手首。
「一緒に入ろうか」
「………えっ」
ど う し て だ。
飛び切りの笑顔に絆されそうになったが、どうせ暴かれてしまうのならせめてシャワーは1人で―――と、しかし。
反射的に引ける腰へ回された腕が、開く距離を許さず。
「…ちょっと、待てそうに、ない……かも」
困ったように垂れた眉。この表情に堪らなく弱いと、重々承知している。
諦めて目の前の厚い胸板に擦り寄った。
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