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*294.
湯気の籠る狭いシャワールームで一通り体を綺麗にするや否や、待ちきれないとばかりに唇を重ねられたのは少し前。
呼吸をも奪うような深いキス。胸が苦しくなったのはきっと、物理的な理由だけではないと思う。
いつもどろどろに俺を溶かす指が、今日はやや乱暴に引き抜かれて。性急な動作に感じ入るよりも早く覗き込んでくる濡れた瞳。
「……いい、?」
浅い呼吸が鼻先に触れて、何も言えずただ頷いた。感謝のしるしとばかりに可愛らしい口付けをもらって力を抜く。
「後ろ、向ける?…そう、偉いね」
湿った浴室の壁に手をつければするりと撫で上げられる後孔。意図せずひくついた其処を恥ずかしいと思う間もなく熱い切っ先が宛てがわれ。
「…ごめん。ゴム、無いや」
連れ込まれた時点で何となく察してはいた。対する彼がここまで気付かなかったという事実。それだけ余裕が無かったのかと考えただけで、きゅんと内壁を締めてしまう。
はやく、と象った音が届いたのか、ゆっくり進んで来る塊。薄い膜がたった1枚取り払われただけでこんなにも違うのか、と唇を噛む。
全てが収まったところで緩く最奥を突かれ、思わず仰け反った。タイルの壁を滑った指は後ろから伸びてきた手に捕われ、半ば抱えられるような形で彼に身体を預ける。
「っ、も、…や、です……それ、」
「うん?」
振り仰いだ相手を睨んで、詰まる息を必死に吐き出す。浴室は音が反響してしまう。だから、なるべく声を出したくない。
そう、思っていたのに。
「…あ、っ!?ひ、ぅ……!」
浅いところのしこりを擦られ、本能的に逃げようと身体を丸めた。強すぎる快楽に、感じるのは恐怖。緩く首を振れば微笑みが耳朶を擽る。
「奥、嫌なんでしょ…?」
「ち…が、っ、…そうじゃなく、て」
熱に浮かされた頭では、どう伝えれば良いのか上手く纏まらない。う、と唸ってから諦めた。
そんな俺の様子を見て再開された抽出は、やはり記憶にあるものより荒っぽくて。とろけた肉壁を擦られるたびに、普段は感じられない三井さんの先走りに濡らされて自然と腰が揺れる。
「ん、ん……っ、ぁ…」
「…煽らないで、ってば」
無防備に晒す項をなぞられたような気がする。這うのは指か、唇か。伝う水滴も纏う空気も、全てがあつくて、分からない。
ずるりと抜け出た彼が放った欲は、タイルを白く汚した。シャワーで流されるそれを上書きするように、ほどなく自分のものが重なって。
かくりと折れそうになる膝を叱咤しながら、三井さんの腕に縋る。抱きとめてくれる彼の息もまた、弾んでいた。
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