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(…俺が、どれだけ我慢してるかなんて) この子はきっと分かっていない。大事に大事に、それこそ箱に入れて閉じ込めたいぐらいだというのに。 あっさりと境界線を越え、決壊させた堤防がどれだけの高さだったか。良く思い知らせてやらないと。 狭い浴室の中ではどうしても体位が限られてくる。溶けて乱れる表情を見られないのが残念だ。ゆっくり進めた楔が根元まで飲まれる様は何とも卑猥で、ほうと息をつく。 「……すごいね、ここ」 「ひ、ゃ…!?ぁ、……っ」 みっちりと自身を咥え込む蕾をぐるり一周。縁の収縮が指先に伝わる。ゴム越しでは感じられない直の温度に、自然と硬度を増す陰茎。じっとりと湿った肉壁は熱くとろけ、まるで熟れた白桃のようにいじらしく自身を締め付けてくる。 緩くひと突きすれば、グジュ、と湿った音が届いた。包まれる温かさに思わず口角を上げたところで、振り向く楓くんの視線が絡まる。 「…ま、…まだ……?」 動いてくれないのか、と雄弁に語る瞳はぐずぐずに溶けて零れ落ちそう。 こちらの気も知らずに煽り続ける彼へ舌打ちを送って、片足を抱え上げる。不安定な体勢へ変えられたことで、きゅうと蠕動をみせる胎内。 交差する茂みを尻たぶに擦り付けるようにして、遠慮なくごりごりと抉り倒した。穿つたびにビクンと波打つ腰周りの艶めかしさと言ったら。 反らす背中に吸い付きながら項をまさぐり、鬱血痕を散らす。後先考える余裕は欠片もなかった。 「う、…ぁ、んん、っ……!」 「は……っ、ね、気持ちいい?」 壁との間で切なげに揺れる性器を握りながら尋ねれば、溢れる先走りは留まる所を知らず。先端へ塗り込めて扱くように追い立てる。 ひ、と喉が鳴る音。あえかな喘ぎを是と取って微笑む。 最奥の、その先。こじ開けてやろうと腰を掴んだ。 「…や、っ……こわ、い」 「ん…だいじょうぶ、だよ」 拓かれる危機を本能で感じ取ったのか、抵抗するように押し返された手のひら。絡め取ってあやそうとするも、彼はなお怯えながら緩く首を振った。 「………ひ、…ひか、る…さん」 息が止まる。比喩ではなく、一瞬、ほんとうに。 いっそ壊してやりたいと思うほどの狂気じみた感情が全身を駆け巡った。じわりと侵される心の柔らかい部分。 「え、ぁ……な、なん、でっ…」 身を持って受けた、報い。反射的に膨張する雄を締め付けた彼は綺麗な涙を流す。今夜はとことん付き合わせると密かに決めた。 だから、諦めて。君を―― 「……ぜんぶ、頂戴」 捧げてもらおう。

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