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「これ、持って行って」 静かに掛けられた声。振り向けば小さな紙袋を差し出す三井さん。 「売ればそれなりに換金できるはずだから」 見るとそれは、あのジュエリーショップのロゴが印字されていて。黙って受け取れば良いものを、ここでも素直になれない俺は。 「要りません。そんな……別の人に、贈るはずの物」 「…は?」 場にそぐわぬ間抜けな声を上げたのは彼。見られていたことにようやく気づいたのか、と薄笑いを浮かべる。 「あなたはいつだって綺麗な女性を連れていますね」 呆気に取られる三井さんを他所に、取り出した家の鍵を靴箱の上に置く。もう使うこともないだろう。 「残った荷物は全部処分してください」 「ちょ……ちょ、っと、待って!」 我に返った様子の彼が掴んだ手首が熱い。まだ何か?と余裕を装いながら首を傾げる。 「…見てたんだ」 この期に及んでその確認とは。苛立ちと共に腕を振り払う。 「っ……そうじゃなければこんな事しません!」 いくら何でも。俺だって大人だ。全てを放り出して感情だけで動くなんて、自分には縁遠い未来だと思っていた。 「あれは、―――従姉妹だよ」 重いため息をつく彼に、今度はこちらが呆気に取られる番だった。どうも嫌な予感がする。 「君も知ってるかな、このブランド。最近は海外にも認められて、この前アメリカに店舗を出したんだけど。従姉妹は…代表取締役なんだ。視察がてら長期滞在をしていた彼女が帰ってきて、ね」 オーダー品を受け取る話をしたら、ぜひ一緒にと。 語る声が、遠く聞こえる。 また―――やってしまったのか。 目の前の顔が見られず、へなへなとその場に崩れ落ちた。

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