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横たえられたベッド。見上げる天井を隠すように視界を覆う三井さん。 「…ねえ」 影のかかる相貌。頬に伸ばした手を、彼の指があっさり絡め取って。小さな呼びかけに視線で応える。 「……出逢わなければ、良かった、なんて…言わないで…」 閉ざされた瞼。その奥に浮かぶのは。 途切れがちに吐き出された、それは祈りにも似た懇願。 俺の胸元に額を押し付ける彼の後頭部を撫でた。まるで年下のような行動を、不覚にも可愛いと感じてしまう。 「み……晄さん」 上げられた顔。双の瞳が揺れる。 嘘をついてしまおうかとも思った。優しい、嘘を。 でも。 「…出逢わなければ良かった、と。思ったことは…正直、あります」 本音を告げることで傷つけたとしても、それが今の自分に出来る最大の償いだと信じて疑わなかった。 喧嘩ですれ違った時。勘違いをした時。 もしもの未来を思い描いたことはある。 「でも。もう、二度と…言わなくても良いように、してください」 ゆっくりと見開かれた瞳は、やがて静かにほどけた。しばらく考え込んだ様子の晄さん。 頷いて、そっと耳朶に吹き込まれた囁き。 「―――…」 嗚呼、幸せとはきっと、こういう事。 胸がきゅうと締め付けられて。痛いほどの甘い疼きはそのまま全身を巡る。 欲しいと、思った。 目の前で微笑む彼を。晄さんを。 求めても良いだろうか。 「ひ、晄…さん、」 言葉にするのはやっぱりまだ恥ずかしくて、その柔らかな唇をそっと撫でた。縮んだ距離を、それでもまだ遠いと焦れる。 するり、シャツの裾を割って侵入してくる手のひら。跳ねてしまった身体を持て余しながら、見上げるのは原因となった彼。 「……明日の研修、君はお休みです」 「っ、え…?」 忍ばせた指先で脇腹を擽られる。宿った熱が伝わってしまわないかと唇を噛む俺の耳朶に、落とし込まれた声音。 体を起こした晄さんが、笑う。 「きっと、立てないよ」 背中にはシーツ。上には狼。 意味を理解した途端、ぶわりと熱くなる顔面。今、この瞬間。同じ気持ちだということが堪らなく嬉しい。 すきです、と。呟く声は口内に吸い込まれた。

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