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「お疲れ様でした」 「うん、お疲れ様。今日も頑張ったね」 夜。夕食の片付けを終えてソファーに並ぶ。晄さんにコーヒーを差し出しながら、ぽつりと切り出した。 「…昼間は、すみませんでした」 「どうして謝るの?」 重荷になりたくない、と小さく告げると隣の彼からはため息が聞こえた。呆れられてしまっただろうか。 弁解しようと体を向けた瞬間、掠めるような口付けが唇を攫って行った。目を瞬かせる俺に、微笑んだ晄さんはひとこと。 「…抱かせて」 *** 穏やかながら有無を言わせぬ口調で押し切られ、気づけばベッドに転がされていた。 うつ伏せになる俺の後孔は限界まで広げられているのに、どうしても喜んでしまう身体は彼を締め付ける。 「……ねえ、」 耳元に落とされた楽しそうな声。時折混ざる吐息が、じわりと下肢を湿らせる。 「もう、俺の形…覚えた?」 「っ、な…!ひ、ァ……ぅ」 あまりの言い草に思わず振り仰げば、内壁の良い所に擦れた先端が俺を虐める。かわいい、と舌なめずりする晄さんは、それでも決して激しく貪ろうとはしなかった。 ゆったりとしたストロークはもとより、先ほど抉った箇所をもずらして突いてくる。もどかしさにどうにかなってしまいそうだ。 「ひ…ひか、る、さ……ん」 「なあに?」 わざと。絶対にわざとだ。穏やかに笑う彼の思惑通りに踊るのは癪だが、仕方ない。噛み締めた唇をそっと解いて、 「も……っ、ほし、い…」 蚊の鳴くような声で懇願した。にも関わらず、この人は。 「んー…もうひと声」 ゆるゆると出し入れされる熱い塊は、俺の身体を燻らせるだけで。一向に訪れない終点。見えないそれに、ふと視界が滲む。 「……いじ、わる…」 ひくりと喉を震わせた俺に気づいたのか、慌てた様子の彼に体をひっくり返される。目尻に落ちた口付けは優しかった。 「ごめんね」

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