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じりじりと

 俺の要望どおり、黒のシャツをぺろりと捲し上げてくれたのはいいけど、ほんとに腹筋しか見えない。  もう少し胸のあたりまで上げてくれてもいいじゃんね?  ガードが固いのか、ゆるいのか……。  相手は男だから警戒する反面、油断もしてしまうんだろうけれど。  まあ、チョロいのはチョロい、かな。 「すごい、こんなに綺麗な筋肉、久しぶりに見たなあ」 「……それは買いかぶりすぎだ」 「いや、なかなか居ないよ、一般人でこんなにバランスのいい身体を持ってる人は。モデルとかなれんじゃない? ね。触ってもいい?」 「……っ、」  こくりと頷いた彼を確認してから、張りのある滑らかな肉体美にゆっくりと触れてみる。  日に焼けた筋肉の凹凸、刻まれた溝を撫でると、温かな固い弾力が指先に伝わり、ぴくんって、彼の下腹部がひくひくした。 ……分かりやすい。敏感なんだ。  ズボンから下着のウエスト部分の黒いゴムがちらりと見えて、やらしい。  腰と下着の隙間に、指、突っ込みたいなあ。あとでそうしよう。 「……ねぇ、胸は? やっぱり盛り上がるくらい筋肉ある?」 「いや、そんなには……って、ちょ、ま、待てっ、嫌……!」  問答無用です。  抵抗しだした彼を宥めすかし、半ば強引に制止を振り切ってシャツのなかへ手を滑り込ませると、胸筋をうにうにわし掴む。  指が乳首を掠めるたびに肩が跳ねるテツヤさん。  これ以上の侵入を阻止するために腕を掴んできて、なかなかの力強さにちょっとびっくりするけど、構わずカメラに見えるよう服を鎖骨近くまで捲って、爪でかりかり乳首を弾いたり、つねってみる。 「いやだ、やめろっ、絡みはナシだって言ったからっ、だから、ついて来たのにっ、アっ、いや、やぁ……ッ」 「……」  う、わあ……、嗜虐心くすぐるなあ。 『嫌だ』って言う、泣きそうな困った顔が威圧感を消して、ギャップがすごい。  これでノンケって、今まで勿体ない人生を歩んできたんだろうな……。  男に触れられ慣れてない、愛撫されることを知らない身体は、余計に汚したくなる。 「どうして? 乳首、勃ってるよ、ほら」 「っこれは、寒いからで……! ほんと、いやだ、そこっ、うぁッ」 「……うーん。じゃあさ、前は? 腰細そうだし、ズボンの上からでいいから、ちょっとカメラに向けてくんない?」 「……は、ズボンの、上から?」 「うん。それなら出来るよね?」  彼の拒絶を受け入れて、次に妥協案を出す。  こっちはしっかり金払う誓約してるんだ。  交渉は成立してるんだから、それなりのことはしてもらうよ。  本人もそこは理解してるはずだし、これくらいなら断れないだろうと、分かっていてそう言った。  案の定、 「前って……、前だよな?」 「うん。ちんこのカタチ、見たいな」 「……でも、服着てるから、そんなに見えねぇと思う」 「まあ試しに、ね? ちょっとここで立ってみて」 「……ん、」  俺と目を合わせないあたり、本当は嫌なんだろう。  テツヤさんは渋々といった様子で立ちあがると、両手のひらで股間部分の布をそっと押さえた。  周りの生地が手で抑制されたことによって、浮き上がる、膨らみ。 「なかなかボリュームあるね」 「っも、いいか……?」 「だーめ。ちゃんとカメラに見せて?」 「っ、」  俺の台詞にカメラ君が前のめりになり、テツヤさんのそこを舐めるように撮影する。  彼はカメラ君の頭をじっと見ていたけど、しばらくすると恥ずかしそうに、椅子に座ったままの俺を窺った。 『もうやだ、やめさせて』って顔。やばい、いいね。  でも、まだだよ。  無言の懇願に素知らぬふりをして、俺はにっこりと笑う。  せっかくなんだから、DVDを購入、もしくはレンタルしてくれる視聴者さんにご満足いただけるよう、ちゃんと撮らなきゃ、ね。 「これ、通常時でこのサイズなの? いいモノ持ってるね」 「いや、普通だと思っ、ぅひぁ……!?」 「あはは、すごい声」  喋ってる途中で、ちょっとちんこ揉んだだけなのに……。  ひっくり返った声と、驚愕を隠せずにびくつく身体。  そういう初々しい反応されると、童貞の少年に手ぇ出してるみたいで、興奮する。  見た目はほんと、男前なお兄さんなんだけれど。

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