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わるい子、だれ
緊張しているのか、引き縛ったその唇は表面が少し乾燥している。
舌でべろりって、舐めて濡らしたい。
「ほんとに、パンツの上からだよな?」
「うん、もちろん」
「急にずらしたりすんなよ、まじで」
「ふは、しないしない」
人ってさ、嘘をつくときは二回言うんだ。『はいはい、しないしない』ってね。
まあ半分冗談だけど、半分は本気。
結局のところ、俺の気分次第なわけだ。
そんなこと、口がさけても言わないけれど。
一度は難色を示したものの、意を決した彼は身体を反転させて俺と向かい合い、カメラに尻を向ける。
そして腰で結んだツナギの袖をゆっくりと解き、ウエストに手をかけて『ほんとは焦らして勿体ぶってんじゃないの?』と思うほど長い時間躊躇いながら、尻のすぐ下あたりまでで手を止めた。
あっは、やっぱり分かってないなあ。
さっきの腹筋見せてくれた時もだけど、せめて太ももチラ見え出来るくらいに下げるとか、もうちょっとサービス精神ないの?と言いたい。
でもまあ、誘惑するような目でがっつり脱がれて、いかにも慣れてる感が滲み出てるよりは、こういうほうがノンケっぽくて、今回のコンセプトに合ってるからいいけどさ。
太ももが隠されたこの感じも『脱がせたい』と思うから、ある意味では男心を心得てるのかも知れない。
しかしふと、真っ赤になった顔に気付く。
……あぁ、この人、すごく質が悪い。
「恥ずかしい?」
「ったりまえ、だろ」
「はは。あれ、意外とお尻は大きいんだね。安産型っていうの? 柔らかそう」
引き締まった細くも筋肉質な外見をしておいて、この尻はえろい。
ケツだけ脂肪がつきやすいのかな。
他は固そうなのに、ここはすごくムチムチしてて、柔らかそうなのが下着の薄い布越しでも分かる。
顔挟みたい。そして思いっきり揉みしだいて、スパンキングとかしたい。
なんだか平手でぶっ叩きたくなる、ぷりっとしたいやらしいお尻だ。
「っ、うちの親父もでかいから、遺伝だ。人が気にしてること言うな……っ、」
「気にしなくていいよ。むしろ俺は好きだし、桃尻」
「もっ、!」
絶句するテツヤさんをしり目に、彼と向かい合うように立っていた俺は相手の腰に手を滑らせ、両手でやんわりと尻たぶ全体を撫で、むにぃ、と掴み、そのままやわやわと揉みこんだ。
「っうぁ、あ、やめ……!」
「いい加減にしなよ? 堪え性ないなあ」
音声を拾われないように、テツヤさんにしか聞こえないような声量で囁く。
今までへらへら笑ってたぶん、優しくはない、たしなめるような冷たい声色に、彼は黙りこんで。
切れ長の瞼を伏せると、おそるおそる、けれど力強く俺の背中にぎゅっと抱きついてきた。
「そうそう、嫌なことは早めに終わらせたいよね?」
「っふ、く……、んんっ」
ふは……、絶対マゾだ、この人。
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