12 / 63
気持ちよかった?
「っ、んぅ……」
急にそんなことをしたら、また逃げ腰になるかな、なんて思ってたけど、違った。
まるでお互いを愛し合う恋人同士みたいな口付けに、テツヤさんはちゃんと応えてくれる。
舌先がちろちろと触れ合い、かぶりつく。
何度も角度を変えて、唾液が溢れてくるような濃厚なキス。
彼は、雰囲気や空気に流されやすいのかも知れない。
「っん、ふ……」
「かわい。テツヤさん……」
「っ、あふ、ぅ、ん……ほめ言葉に、ならねぇって……っんぅッ」
あー、もう、なんだろう、久々にきゅんきゅんする。
その台詞はノンケらしくもあり、男のくだらないプライドの顕れであるくせに、同性で年下の俺にいいようにされてる事実が違和感を生んで、滑稽だ。
まあ彼は俺が年下だなんて知らないけど、もし知ってたらもっと意地を張られたかも。それはそれで見てみたかった。
「……ほんとはもうちょっと楽しみたいけど……」
「ふ……?」
「そろそろ次の準備しなきゃ。腸内洗浄は自分で出来る? シャワー浴びてきてほしいんだけど」
「ぁ……、」
とろんとした瞳のなかに、理性の光りがよみがえる。
キスに没頭していたことを恥じらうように、彼は心なしか頬を紅潮させ、明らかに俺から目を逸らした。
はは、ほんと可愛いわ、この反応。
思いながらも口には出さず、もちろん彼の気恥ずかしさにも気付かないふりをして、ぎこちなく首を縦に振ったテツヤさんにイチジク浣腸を渡し、浴室に行くよう促す。
下半身を丸出しにしたまま、よたよたと覚束ない足取りでシャワー室に向かう後ろ姿を名残惜しくも見送ったところで、多少俺も気を張っていたのか、一気に脱力した。
ともだちにシェアしよう!