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野暮用とは

「──どこ行ってたんですか。もう大体は録ったあとなんですけど」 「ごめんごめん、ちょっと野暮用でね」  壁もソファも棚もベッドも、赤で統一された趣味の悪い部屋は、今はむせ返るような雄の匂いが充満していた。  眼精疲労を起こしそうなそこは、事務所の下の階にある撮影スタジオ。  ある意味完全なるノンケの俺は、何があろうと被写体にはならない。  任される仕事は当然裏方ばかりで、必要ならばカメラ以外に、照明や大道具の担当にもなる。  前半部分として録った映像を椅子に座って黙々と確認していたところで、後ろからひょっこりモニターを覗き込んできた彼の姿に、俺は盛大に顔をしかめた。  思わず冷たい態度をとったのは、本当なら出演予定だった彼が本番前に突然消え、あらかた録り終わった今になって、飄々とした顔で帰ってきたからである。 「野暮用って……。今日は乱交メインだからって気ぃ抜いてるでしょ」 「そんな恐い顔しないでよ。一応仕事の一環なんだから」 「はあ?」  今日の撮影は、所謂乱交パーティみたいなもので、頭数さえ合えば出演者が誰であろうと別に構わない。  他にも男優がいたからいいものの、だからと言って仕事を放棄してまで行く野暮用ってなんだ。

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