あの台詞を言われてから──。 　俺が初めて男に身を任せてから、二週間はとうに過ぎた。 　用もないのに連絡なんて出来るはずがないし、そもそも何を言えばいいのかも分からない。 『元気か？』 　友達じゃないんだから、違和感があるだろうか。 『声が聞きたかった』 ……可愛い男女ならまだしも、俺が言うと気持ち悪くねぇか、これ。 『仕事はどうだ？』 　そりゃあ順調に決まっているだろうが、仕事がアレなだけに、何だか複雑な心境になるから別に聞きたくはない。 『純粋に繋がりたいと思った』 ……そう、これが本心だ。 　だが、イコール『純粋にヤりたいと思った』なんて捉えられてしまったら、どうしよう。 　俺が求めているのは、性欲じゃなく心の繋がりだ。 　仲良くなりたいというか、もっとアイツのことを知りたいというか、気にはなってるし興味もあるんだけど、恋人にしたいとかそんなんじゃなく。 　少しでいい。 　ゆっくりと、やつとの時間を共有出来たら──。って、そんな今どき女子中学生でも考えないようなアホらしい気持ち、大の男が言うのは、さすがに躊躇われる。 「どうすんだよ……」 　どうしたらいいんだよ……。 　今日も名刺を手に、消え入りそうな低い呟きが、狭く殺風景な自室に落ちた。