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拒絶反応

 ぎゅう、とまるで誰かに内臓を握りしめられているみたいに、腹のなかが切ない痛みに襲われた。  喉の奥から熱くて苦しい何かが込み上げてきて、ずず、と鼻をすする。  内側から気道を塞がれた気分だった。  息が、呼吸が、ままならない。 『っあンッ! あ……っ』 『ほら、もっと締めて。こんなガバガバじゃイけないよ』 『あぅっ、ん、ごめ、なさ……っひゃ、ぅ』 『ふは、ほんっとゆるゆる。誰がこんなふうにしたの? 彼氏?』 『やぁっ、言わな、で……っあ、んんぅ!』 『えっち大好きなんだ? 見て、こっちももう完勃ち……』 「っゔ、ぅー……っ」  嫌、だ。いやだいやだいやだ。  聞きたくない、見たくない。  今すぐコンセントごと引き抜いて、音も映像も遮断してしまいたい衝動に駆られるのに、後孔を出し入れする指が止まらない。  経験豊富そうなわりに綺麗なピンク色をしている受けの後孔へ、あいつのがみっちりと入っている。  追い打ちをかけるかのように、まざまざとそう感じさせる卑猥な音が、ぬちぬちとスピーカーから流れた。  それは次第に破裂音を含み、本格的に抽挿しだしたのが視界に入って、目の前が滲む。 「う、ぁ……いや、だ」  嗚咽を漏らしながら、空中に手を伸ばす。  伸ばした先には何もない。目頭が熱い。  霞む視界で何とかベッドサイドの一番下の引き出しから取り出したのは、黒い、勃起した陰茎をかたどった、ディルド。  これも通販で買ってしまった。  似ていたから。俺に入れられたものと。  色も形も大きさも、そっくりだったから。  男性器の形をしたオモチャなんて、太くて硬くて恐いものだと思っていたのに。  指だって二本までしか入らなかったのに、あいつに慣らされたせいで、もうアナルスティックや指だけじゃ物足りない。  満足出来ない身体に、なってしまった。 『あんっ、ぁっ、ア、ぁあ……ッ、すご、イイ……ッ!』 「っひぁ、ぁ……っ」  素肌を重ね、腰を振って盛り上がる画面の向こう側に、じりじりと胸を焼かれていく。  心身がバラバラになりそうな錯覚。  腹を、規則正しく並んだ臓器を抉られ、かき混ぜられるような気持ち悪さに、今度は嘔吐感が押し寄せる。  えずきを堪えながら、黒いそれを両手で支え、ひくつく秘孔に押し当てた。  拒否感で胃は限界を訴えているのに、下半身が別の生き物みたいに、太いモノを、さらなる高みを目指して貪欲に性感を欲しがる。  拒絶反応が起こる。  気が、狂いそうだった。

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