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飛び火
「っん、んぁ、ぁあ゙……ッ!」
透明のローションを纏ったディルドが妖しい光りを帯びながら、ゆっくりと確実に、狭い内壁へもぐり込んでいく。
この大きさが俺には限界値だ。
直腸の襞が伸びきる寸前まで、みちみちとナカが満たされるのを感じる。
冷たい感触に背中が震え、肌が粟立った。
『あっ、あ、熱い、ぁン、奥まで、当たってる……っ』
『ほんと、えっちなんだから』
「ふ、ぁ……ぁうっ、ん」
……意地悪な顔、してる。
その目で見つめられたら、俺はどう感じるんだろう。
……奥まで当たるって、それって、どんな感覚で。
冷たくない、無機質じゃない熱いモノを入れられる気分とは、一体どういう気持ちなんだ。
後ろを満たされる充足感は知っていても、ホンモノを入れたことのない俺は、がつがつ突かれる衝撃とか、身体の重みとか、他人の温もりとか、そういったものは分からない。
『気持ちいいの? ナカ、俺に絡みついてくるよ』
「っふ、ぁ、!」
すうっと、本来なら聞き逃してしまいそうなくらいに小さく呟かれた音声が、すっと耳に届く。
覚えのあるそれに身体が引き裂かれそうになる反面、ぶわり、と甘い毒が中心部から全身の血管を駆け巡った。
ディルドを掴む手に力が入り、ぐりゅん、と勢いよく全てを埋め込んでしまい、反動で思いきり喉が反る。
「ひぁ、んぅ……!」
思いがけず嬉しそうな悲鳴が上がって、反吐が出る。もちろん自分に。
何やってんだろう、俺。
頭の片隅ではまだどこか冷静なのに。
客観的な冷めた目で、自分を見ているくせに。
吸い込まれるように最奥まで入ってしまったディルドを引きだそうと動かせば、前立腺を擦りあげる刺激が背筋にまで駆け上がって。
そんな憂鬱な心情は、凄まじい快楽によって強制的にかき消された。
『あぅ、ァ、きもちぃ、きもちぃよ……っひぁ、ぁあん!』
「やっ、ぁ、ァ、あぁ……ッ」
耳を劈く、媚びるような甘ったるい声がうるさい。
それが俺のものなのか、テレビのなかのものか、不協和音すぎてもう聞き分けがつかない。
あいつの背中に腕を回し、腰に足を絡ませて、縋りつく女みたいな男。
奥を突かれるたびに恍惚とした気持ち良さそうな高い声を上げていて、やつらの興奮が俺にまで飛び火する。
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