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規制線の向こう
アップで結合部が映るものの、ぼやけたモザイクがかかって詳細は見えない。
──その規制線の向こうでは、一体どんなふうに、どんな感触で。
ディルドを動かす手は止まらず、かえって速度が増していく。
『あっ、あぁ゙……っ、』
「んっ、ふ、ぁ、あ……っ」
『俺の、このディルドよりちょっと大きいんだ』
あの日、耳許で囁かれた吐息混じりの睦言が頭をよぎった。
よみがえる、夢のようにおぼろ気で、だけど忘れられないほどに強い記憶。
それって、どれくらいの大きさで、長さで、硬さで、太さで……。
舌で舐め回し、口をすぼめて啜った肉棒の感触を思い出す。
今までなら男のモノを口に含むなんて考えられなかったのに。
自分ばかり恥ずかしい思いをしたのは納得がいかなくて、やつに気持ち良くなってほしい一心で、奉仕した。
……嫌だとは、思わなかった。
拙い動きであいつのモノを手で擦りあげ、その上から指を絡めてきて、一緒に扱いたあの肉々しさは、まだ舌でも手のひらでも、鮮明に覚えている。
──あれが、俺のナカに。
『あンっ、あっ、だめぇ、変に、なるっ、』
『……ふは、変になってよ』
「っひぁ、ぁ……ッんぅっ」
喘ぎっぱなしの口端から唾液が垂れ、顎を濡らす。
ローションが白く泡立つほど、ぐちゅぐちゅとディルドをピストンさせる手は、もう自分じゃ抑制不可能だ。
オモチャの先端で前立腺を穿つたび、ディルドが直腸の襞をずりずり引きずるたびに、足の先にまできゅっと力が入る。
腰が抜けそうな、不安定で激しい愉悦に心許ない気持ちになった俺は、何かに縋りたくて、後ろのシーツを手繰り寄せた。
想像する。
……いや、同調させた。
頭のなかで、あいつに今犯されているのは自分だと、ネコの男に己を置換し、重ね合わせると、とんでもなく高揚した。
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