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さみしい
『っあ、は……、ふ、ぁ』
『すごいね、トコロテン?』
「あぁ……っ、ぁう、ん、ん……ッ」
全身を駆け抜けた甘い痺れ。
もう息を整えるだけで精一杯。
まだ抜けきらない快楽にぴくぴくと身体は反応を示し、ふわふわする余韻と倦怠感に俺は大人しく身を委ねる。
すぐに後処理なんて出来そうになかった。
思った以上に体力の消耗が激しいらしく、ベッドにぐったりと背を預けたまま、今は指先さえも動かすのが億劫で。
上半身に飛び散った精液を見つめる。
シャツも股もベタベタな自覚があるが、虚しいとか悲しいとか以前に、頭がぼんやりして思考が働かない。
……人とセックスする前に、ところてん、してしまった。
ちんこ触んなくても、後ろだけでイった。
正直、怖かった。
『はじめて、お尻だけで出ちゃった……』
『そうなの?』
『うん……。すごい興奮した……。ねぇ、キスしてもいい?』
『ん、いいよ……』
そうして、お互いの舌を絡ませながらの濃厚なキスシーンを最後に、画面はエンディングを迎え、暗くなっていく。
しばしの静寂。
部屋には俺ひとりの荒い息遣いだけが耳に残る。
数秒後にはまた、始まるのだ。
流れや設定は違えど、再び知らない相手と身体を重ねるあいつの姿が。
──怖かった。
自分の意思に反して勝手に絶頂へ向かった身体が、自分のものじゃないみたいに思えて、不安で。
この寂しさを、心細さを、俺しか知らないのも嫌だった。
誰かに、じゃない。
あいつに、あいつだけに、『大丈夫?』って、もっと意地悪な台詞でも何でもいいから、声をかけてほしかった。
……もう見たくない。何も、聞きたくない。
そう思うのに、全身を酷使し欲を吐き出した身体はいうことを聞かず、重い瞼はゆっくりと閉じられる。
目を瞑った瞬間、生ぬるい何かがそっとこめかみを伝っていったが、それが何かも分からないまま、俺の意識はそこで途絶えた。
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