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目覚めは最悪
次に目が覚めたとき、呆然と言葉を失うくらいには、自分は悲惨な状態だった。
どれくらい眠っていたのか、液体と固体の中間のようになった生乾き真っ最中の精液。
DVDはエンドロールどころか、自動停止していて真っ暗。
ついでに太陽も沈んでいて、部屋まで薄暗かった。
「っはあぁー……」
腹の底から深い溜め息が吐き出される。
大惨事に愕然とはしたが、思ったよりも頭はすっきりしていて、あいつをオカズにした罪悪感や虚無感もなかった。そこだけはほんとに、少し安心する。
性欲が落ち着いたせいだろうか。
だとすれば、なんて単純明快なカラダなんだ。
それはそれで、自分に呆れて絶望しそうになる。
体力的に無理はしたけれど、物理的なキャパシティは超えてない。
だから起きてすぐにテキパキと後始末に取りかかることが出来た。
とりあえずシャワーを浴びて、使ったオモチャを片付け、DVDもケースにしまう。
これを再び観ることはもうないだろうな、と適当に作った晩飯を食いながら思う。
ていうか普通ならネコを見て興奮する代物のはずが……。
全然見てねぇよ、俺。
最初の話の内容とか顔とか、今となってはうろ覚えだ。
……そういえば、俺も出たんだよな、AVに。
何だか今になって実感する。
一時的な金と快楽の代償に、自分が滑稽に乱れる姿を、売った。
そしてさっきの俺みたいに、不特定多数の知らない誰かがそれをオカズにするんだ。
あいつのやっていることは、身体で夢を売る商売なのだ。
自分の地位と会社の業績を向上させるために職務を全うしているだけで、そこに恋愛感情などない、ただの義務。
「……」
……まあ、だからなんだって話だよな。
分かっていたはず。
そんなことは、最初から。
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