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9 四谷健太郎という男

四谷 健太郎(ヨツヤ ケンタロウ)26歳。 宅配便屋で働く元気な青年。 190cmという長身に、切れ長の目が印象的なイケメンで、うちの銀行の女性社員を虜にする。 なぜだか荷物を持ってくるのはいつも俺の窓口で、隣の窓口の女性社員はヤキモチを妬いている。 というのも、こいつとはなんだか複雑な仲で… 昔付き合っていた彼女(先輩)の弟なのだ。 その関係で、当時はよく一緒にいたのだが彼女と別れてからなんだかこいつとも気まずくなり、全然連絡を取っていなかったのにこの銀行に就職してから再会したのだ。 『すみませんでした。』 なんで俺が謝らにゃならんのか…と思いながらも席を外していたことを謝り椅子に座る。 『あ、鈴木君。宅配便屋さんが来てこのメモ置いて行ったの。鈴木君に渡しといてくれって。そんなに仲良かったっけ?』 そう言われて渡されたメモには、「電話をくれ」と書いてあった。 まだ番号残ってたかな? なんて思いながら女性社員の仲良かったっけ?をなんとか濁して礼を言い、メモを机の上に置いた。 とにかく早く仕事を終わらせなければ… と、手元が焦る。 今日こそ本当にマズイかもしれない。 俺、喰われちゃうとか? 怖ッ… 想像して身震いしながら、机の上の書類を片付けて行く。 『いらっしゃいませ。ご出金でございますね。お掛けになって少々お待ちください。』 窓口に来たお客様を対応する。 ほんと、客さえ来なけりゃ残業しなくて済むんだけどなぁ… なんて心の中でボヤきながら出金の処理をする。 『◯◯様、お待たせいたしました。』 『ありがとう。今日も男前ね。』 『いえ、そんなことないですよ。』 『フフ。謙遜しちゃって。じゃぁまた来るわね。』 『ありがとうございました。』 お客様に頭を下げ、椅子に座った。 『鈴木君モテモテね。』 隣の窓口の女性社員がニヤニヤしながら言う。 『いや、そんなことないですよ。からかわれてるだけなんで。』 『そうかなぁ…モテるでしょ?』 『モテ……どうでしょう?』 濁した。 いや、きっと人並みにはモテてると思う。 今までだって彼女いたし… だけど、最近なぜだか女が寄ってこない。 なんでだろう? ってか、合コンとかも誘われなくなったし、女の子と絡むことがない。 というか、結構毎日残業続きで遊ぶ暇がない。 だからだ… 一人で納得して、ウンウン頷いた。 『支店長って鈴木君のことお気に入りよね?』 『えぇっ!?』 フフ…♡と笑いながら言う女性社員に驚いて椅子からズリ落ちそうになってしまった。 『何!?大丈夫?どうしたの?』 『いや、ご冗談を…』 『支店長見てたらわかるわよ。鈴木君ばっかり見てるしね。きっと若い部下が可愛いのよね。』 あっ…そっちか。 部下としてな。 一瞬この前BARでされた話がバレてるのかと思って焦った。 男と女ならまだしも、男同士だもんな。 そんなこと思うわけないか… 『ちょっとお手洗いいいですか?』 『はぁい。』 取り乱した分、なんだかしんどくなって、気分転換をするために俺は席を立った。

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