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あっ、電話しねぇと…
四谷さんに電話をくれと言われていることを思い出し電話帳を開く。
『あった…』
残っていた番号に思わず声が出た。
プライベートで話すのは久しぶりで、なぜだか携帯を持つ手が震える。
「もしもし?」
『あっ…もしもし、鈴木です。』
「おう、亮太!!悪いな。」
『亮太って…』
「昔はそう呼んでただろ?」
『そうだけど…ってか、なに?どうした?』
「別に用はないんだけどな。」
『はぁ?』
「いや、今日窓口にいなかったから…」
『はぁ!?マジでそれだけ!?』
「ダメか?」
『ダメか?ってダメに決まってんだろ。なんか急用とかそんなんかと思ったし…』
「ってか、まだ番号残してくれてたんだ。」
『残すってかわざわざ消さなかっただけって感じ?』
「相変わらずドライだな。昔から姉ちゃんも言ってたけど。」
『ってか、用ないなら切るけど?』
「あー、じゃぁ、今度メシ行こうぜ!!」
『メシ?なんで?』
「なんでって…一緒にメシ食うのに理由いる?」
『いや、別にいらねぇけど、なんで今更?みたいな…』
「久しぶりに亮太と話したくなったから。プライベートで。」
『あっそ。まぁいいけど。』
「うお!!マジ?じゃぁまた電話する!!」
『はいよ。』
電話を切って溜息をついた。
なぜに今更?
本当にそう思った。
当時、健太郎の姉ちゃんに会いに家に行くといつも健太郎がいて、
「なんであんたがいんのよ!!二人の時間を邪魔しないで!!」
とか言って、よく怒られてたっけ?
すごく大切にしたい友達だったのに、別れた彼女の弟だということがなんだか気まずくて、俺から距離を置いた。
懐かしいな…
メシに誘われたことがなぜか嬉しくて、俺は少し喜びながら自席へと戻った。
『すみませんでした。』
『鈴木君!!急いでローカウンター行って!!五反田様が待ってる!!』
『あ、はい!!』
俺は必要な書類を持ち、ローカウンターへと急いだ。
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