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11 五反田翔という男
五反田 翔(ゴタンダ ショウ)32歳。
一代で結構大きな派遣会社を築いた若社長だ。
すごくできる人らしく信頼も厚い。
見た目はチャラそうなんだけど、言うことややることはしっかりとしていて、180cmほどの身長に目鼻立ちがしっかりとしたイケメン。
この社長目当てに派遣登録をするという不埒な考えの人が多いとか?
でもそんな人を見極め、ちゃんと仕事がしたいという人にだけ仕事を紹介するのだから、きっとやり手なのだろう。
『申し訳ございません。お待たせいたしました。』
謝りながらローカウンターに腰掛ける。
『あっ、鈴木さん。忙しいのに悪いね。』
『いえ、こちらこそ。融資の件ですよね。』
『うん。どう?』
『無事決裁おりました。』
『本当!?よかったぁ。』
すごく嬉しそうな五反田様を見て、こちらもホッとする。
『融資実行のお日にちなんですが、10日後こちらの口座に…ということでよろしいですか?』
『うん。お願いします。』
『では、お手続きいたしますのでこちらにご印鑑をいただけますか?』
『はーい。』
ルンルンな五反田様が上機嫌で印鑑を押す。
意外と可愛いところもあるのだな…
なんておかしなことを思ってしまった。
『では、少々お待ちください。』
頭を下げてローカウンターを後にして、自席で作業をし、またローカウンターへと戻る。
『お待たせいたしました。では10日後、実行後にご連絡させていただきます。』
『はーい。ってかさ、携帯番号教えて?』
『ん?誰のですか?』
『鈴木さん。』
『えっ?』
『ダメ?』
『いや…ダメというか…』
なんで?
と、聞きたいのだが言葉が出ない。
『ここに番号書いて!!』
さっと出されたメモ紙に、断ることもできず、俺は自分の携帯番号を書き込んだ。
『ありがとう。じゃ。』
そう言って五反田様は立ち上がる。
『あ、ありがとうございました。』
それだけ言って頭を下げるとローカウンターを片付けて自席へと戻った。
なにあれ?
新手のナンパ?
いや、誰しもが一ノ瀬支店長のようにゲイではないはずだ。
んー。
一ノ瀬支店長も本当にそうなのかはわからない。
からかわれているだけかもしれないし…
というか、一ノ瀬支店長に変なことを言われてから俺の思考がどんどんおかしくなっている。
本当、これこそ一ノ瀬マジックなのか?
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