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あーダメだ。帰れない。 昼間にバタバタと接客に時間を取られていたせいで、定時では全く終わらず残業するものの、みんなが続々と帰る中、俺はなかなか帰れないでいた。 やべ… チラッと後ろを見るとコチラを見ていた支店長と目が合った。 焦って前を向き直すと後ろから声がした。 『鈴木さん、何か手伝いましょうか?』 『えっ?』 振り返ると三好が立っていた。 『お手伝い…』 『いや、お前外回りなんだから内勤の仕事なんて手伝えないだろ?』 『そうですけど…』 『でも、ありがとう。』 そう言うと三好が少し恥ずかしそうに俯いた。 『でもさ、なんで急に手伝ってくれようとしたんだ?』 『いや…二間さんに聞いて…』 『な、なにを!?』 一瞬支店長のことかと思って焦ってしまった。 『手伝ったら弁当作ってくれたって…』 『はぁ!?』 『俺も…鈴木さんの弁当食いたい…』 なんだそれ? そんな理由? 少し笑ってしまった。 『なんだよそれ。そんなのこんなことしなくたって言ったら作ってやるのに。』 『本当ですか!?』 三好が俺の隣にしゃがみ込み上目遣いで聞いてくる。 『おう。本当。』 その瞬間、三好の顔がパァーっと明るくなりすごく嬉しそうな顔でガッツポーズをした。 185cmの身長を小さく折りたたんで喜ぶ姿は、なんだか小型犬が嬉しさのあまり尻尾を振りまくっている姿に見える。 なんだこの可愛い生き物は… 不覚にもそんなことを思ってしまった。 『いつですか?』 『えっ?』 『いつ…弁当を…』 申し訳なさそうだけど、どこか強引にいつ弁当を作ってくれるのか聞いてくる三好が可愛い。 『なに?お前そんなに俺の弁当食いたかったの?』 『は、はい…』 三好が俯き加減で、でも目線だけは俺に向け返事をした。 なぜだか胸がキュンとした。 なんじゃこりゃ。 いや、ペット的な感じだろ? きっとそうだ。 『明日作ってきてやるよ。でも手伝いはいいから、先帰んな。』 頭をポンッと叩き、ニッと笑うと三好も笑った。 『じゃぁ…お先です。』 立ち上がり、頭を下げると三好が帰って行った。 よし!!頑張るか!! 気合を入れ、俺は再度仕事に取り掛かった。

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