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『そんなに緊張するな。』
支店長に連れられまたあのBARに来た。
『メシじゃなくてすまんな。』
『いえ…』
『だからそんなに緊張するな。取って喰わないから。』
『…』
『俺、無理矢理は嫌いなんだよ。お前から好きだと言ってくるまで手は出さないよ。』
『は?』
『お前を虜にしてやるって言っただろ?』
かなり危ない言葉を吐きながら支店長が目の前のグラスの中の酒を飲み干す。
『あの…俺そっちには…』
『大丈夫。お前はきっとこっちにくるよ。』
フッと笑いながら支店長が言い、マスターに酒を頼んだ。
何かの暗示か?
そう思うけど、なぜだか嫌な感じはしなくて不思議とその言葉を受け入れて行く。
マズイな…
『なぁ、お前二間どう思う?』
『どうとは?』
『好きか?』
『好きですけど、先輩として…』
『そうか。』
『なんですか!?意味深ですよ…』
『じゃぁ三好は?』
『三好は後輩として好きですけど…』
『じゃぁ俺は?』
『支店長は、上司として…』
『上司として?』
『好きですよ…』
『好きなんだ。』
ニヤリと支店長が笑う。
『あっ!!今のは、その…違いますからね!!好きの意味が違います!!』
『なんのこと?』
『えっ!?いや、支店長…好きって言ったら手出してくるのかと思って…』
『なに?期待してた?』
『…してません。』
『可愛い…』
可愛い!?俺が!?
とんでもない恐ろしいセリフを吐きながら支店長が笑う。
でもなぜだかその笑顔から目が離せなくて…
俺はそんな自分に戸惑った。
ちょっと酔ったかな?
暗示?とは恐ろしいもので、何度も同じことを言われたり、誘導尋問のようなものでも、「好き」という言葉を口にしてしまうと、本当に好きなのではないかと錯覚を起こしてしまいそうになる。
『鈴木。俺じゃダメかな?』
両肘をカウンターにつき、手の指を絡めた上に顎を置きながら流し目をこちらに向け支店長が言う。
色気がすごい…
ダメかな?って…
ダメだろ。
必死に首を横に振りながら言った。
『ダメでしょ…』
『まだダメか…残念。』
寂しそうにしながら支店長が酒を煽る。
この人本気なのかな?
だったら俺も本気で考えなきゃダメ?
そんなことまで考えてしまう。
男同士だからって最初から何も考えずに突っぱねてばかりじゃダメなのかな?
なんだかちゃんと考えて、断るならしっかりと断らないといけない気がした。
『よし、そろそろ帰ろうか。』
何分か経ち支店長が立ち上がった。
『はい…』
『マスター、ごちそうさま。』
二人で店を出た。
『あの…ごちそうさまでした。』
『どういたしまして。って、俺が誘ったしな。』
『では、失礼します。』
『明日、弁当楽しみにしてる。』
頭を下げて、俺は歩き出した。
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