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『支店長、これ…』 次の日の午前中、タイミングを見計らい支店長に弁当を渡した。 『おっ…ありがとう。』 嬉しそうに笑う支店長がなんだか子供みたいで可愛らしい。 『いえ。』 『昼、一緒に食うか?』 『いや…何時に昼行けるかわからないんで…』 『そうか。じゃぁ俺は一人でいただくとするよ。』 支店長に頭を下げて、自席へと戻った。 昼休憩。今日も後番で食堂に向かった。 『鈴木、今日も弁当サンキュ!!』 そう言いながら二間さんが弁当を食べていた。 『いえ…』 『なぁ、支店長にも弁当作ってんの?』 『今日はたまたまですよ。昨日頼まれたんで。』 『そうそう。昨日さぁ、大丈夫でしたってメールくれたけど、本当に何もなかったのか?』 『なかったですよ。支店長、無理矢理は嫌いだそうです。』 『は?』 『俺が好きだって言うまで手を出さないらしいです。可笑しいですよね。』 少し笑い気味で言うと二間さんが険しい顔をした。 『お前…ちょっと支店長に靡いてる?』 『えっ?』 なぜかドキリとした。 いや、まだ好きとかそんなのではないが、なぜだろう?昨日みたいに一緒に酒を飲むのは嫌じゃなくて、あんなに避けていたくせに、昨日の一晩で少し支店長を受け入れてしまいそうな気分になっていた。 『早くしないとマズイか…』 『何がですか?』 『鈴木、俺と付き合って?』 『は?』 『いや、だから俺と付き合って。』 『ご冗談を…』 『本気。』 『弁当ならそんなことしなくても作ってきますよ?』 『茶化すな。俺、本気だから。』 言葉の通り、二間さんの目は真剣でドキリとした。 『二間さん…?』 『鈴木、俺はお前が好きなんだよ。俺じゃダメ?』 『ダメ?って言われても…』 『返事はすぐじゃなくていい。支店長に取られる前に俺もお前の事が好きだということを知ってもらいたかっただけだから。』 そう言うと二間さんは立ち上がった。 『弁当ごちそうさん。』 呆然として動けない俺の頭をポンッと叩いて、何事もなかったかのように二間さんは食堂を出て行った。 ちょっと待て。 意味がわからない。 支店長のことを相談していた二間さんも俺が好き? 好きだから毎日残ってくれてたってこと? で、弁当も食べたかったと… そういうこと? いや、なんでこんな一気にモテるのか意味がわからない。 しかも男に… まぁ嫌いだって言われるより、好きだって言われる方が嬉しいけど、好きの種類にもよるだろう? 俺はどうすればいい? 弁当も全然喉を通らなくて昼休憩の間はひたすらボーッとしていた。

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