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『もしもし?』 「あっ!!鈴木さん?」 『…はい。』 「五反田です。」 『あっ!!五反田様!!お世話になっております!!』 「堅いなぁ…今プライベートだから、もう少し崩して?」 『えっ?あ…はい…』 「そうだなぁ…五反田さんでいいから。」 『はい…』 「で、俺は鈴木君と呼ぶと…。」 『あの…今日はどうされたんでしょう?』 「あっ、ごめんごめん。この前言ってたメシに誘おうかと思って。」 あれ本気で言ってたのか…と少し驚いた。 『メシですか…』 「嫌?」 『嫌と言いますか…お客様とっていうのは…』 「いや、完全プライベートだから関係ないよね?五反田さんと鈴木君として会うんだから。」 『は…はぃ…。』 「今からどう?」 『今はちょっと友達といますので…』 「そうなの!?ごめん!!じゃぁ急いで電話切らなきゃね。明日は空いてる?」 『空いてると思うんですが…帰ってから予定見てみないと…』 「じゃぁさ、帰ってから電話ちょうだい?ごめんね!!邪魔して。じゃ!」 そう言って電話が切れた。 本当この前の電話番号の時と言い、強引な人だな… 『悪い…』 『いいよ。食おうぜ。』 『おう。』 『なぁ、電話彼女?』 『俺、今彼女いないよ。』 『そうなの!?よかった…』 『よかったって何!?嫌味?』 パスタをフォークにクルクルと巻きつけながら少しキレ気味で言う。 『違う違う!!お前男前なのに彼女切れることあるんだ…って。』 『最近さぁ…女寄ってこねぇの…なんでだろ。』 本気で寂しくてそんなことを口にした。 『お前モテねぇの?』 『モテ…ひ、人並みには…』 いや、俺は今、人並みどころかモテモテだ。 一気に三人に告白され、正直驚いている。 だけどそれがなぜだか男ばかりで、驚きを通り越してもうわけがわからない。 『なぁ…俺、変なオーラ出てる?』 『はぁ?』 『オーラっていうか、フェロモン?』 『はぁ?意味わかんねぇ。』 『だよな…。』 そんなもん出てるわけねぇよな。 俺は何を言っちゃってるんだろうか? でも、そうでも言っておかないと、今俺の周りで起こっている出来事を受け入れられないのだ。 『そうだ!!さっき俺になんか言おうとしてなかった?』 『あぁ…また後でいいや。』 『なんだそれ?まぁいいや。ってか、ここめっちゃ美味いな。』 料理はどれも美味しくてワインもどんどん進む。 昔の思い出話に花が咲き、気付いたときにはイタメシ屋で三時間を過ごしていた。 『そろそろ出る?』 『そうだな…』 俺が声をかけると、健太郎は意味深な返事をした。 『あれ?もうちょっと食いたかった?』 『いや、腹はいっぱい。飲み直していい?』 『あ…いいよ。お前本当強いな。』 会計を済ませ、店を変える。 飲み慣れないワインに俺はホロ酔い。 すごくいい気分で次の店へと歩く。 『危ねっ!!』 そう言われ、健太郎に腕を掴まれた。 『なに?』 『お前今ぶつかるとこだったじゃん。気を付けろよ。』 『悪りぃ…』 健太郎はそっと俺の肩を抱き歩き続ける。 着いたところは健太郎がいつも行く店らしく、落ち着いた雰囲気のBARだった。 『ウイスキーください。』 『俺はジントニックで。』 マスターに頼みボックス席に座ると、フゥーと一息ついた。 『大丈夫か?』 『大丈夫大丈夫。ワイン飲み慣れてないから足にきただけ。』 そう言いながら机に突っ伏した。 『俺さ、今日はお前に言いたいことあったんだよ。』 『なに?』 机に突っ伏したまま話を聞く。 『顔上げろよ。』 『なんで?』 『大事な話だから。』 『はぁ?なんの話?』 『いいから顔上げろって。』 『なに?』 重い頭を持ち上げると、健太郎はどこか落ち着かない表情をしていた。

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