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『お前、好きなやついるの?』 『なに?急に。』 『いいから答えて。』 『別にいないけど…』 『彼女もいないんだよな?』 『だからいないって。』 『俺じゃダメ?』 『はぁ?』 『お前の隣にいるの俺じゃダメ?』 『ちょっと待て。言ってる意味がわかんねぇ。』 そう言うと、健太郎が「はぁ…」と大きく溜息をついた。 『お前のことが好きなんだよ。』 『はぁ!?』 マジで意味がわからん!!! ってか、4人目!? 俺やっぱなんか出てるって… 何!?怖い…怖すぎる… 『すぐに返事くれとは言わないからさ…考えてよ。』 『何を?』 『俺と付き合うかどうか。』 ヤバイって…ほんと。 色々とヤバイ。 『なぁ、それ本気で言ってる?』 『本気。』 『なんで俺?ってか、お前ゲイなの?』 『いや、違う。男の経験はゼロだけど…』 『だったら俺のこと好きとかなんか間違ってるって…』 『何度もそう思ったけど、再会してやっぱり好きだなって思ったんだって。』 『はぁ?再会?』 『俺さ、お前のこと高校生の時から好きだった。』 『えっ!?』 『話せば長くなるけどいい?』 なんだか気になり、俺は頷いた。 『俺さ、お前とは高校違ったけどいつも通学の電車が一緒でさ、一年の時からずっと見てたんだ。』 『マジ?』 『マジ。で、友達とジャレ合ってる姿とか見ると楽しそうだな…って思って、俺も友達になりたいな…とか思ってたんだよ。だけど、そのうちどんどん友達とかいうレベルの好きではないな…と確信して、試してみたら成功して…あっ!!オナニーな。お前想像して。うわ…これ本気で好きだわ…ってなって…』 『へ、へぇ…』 あまりの衝撃発言に、俺はこんな相槌を入れることしかできなかった。 『で、二年になってある日家に帰るとお前がいてビックリしたわけ。なんで!?って思ったら姉ちゃんの彼氏で、俺は失恋決定。なら諦めて友達になろうか…と思い、お前に近付きました。』 『し…下心ありありですね…』 なんて茶化した相槌を入れる。 『まぁ、その通りだよな。隙あらば…なんて思ってたからな。』 危ないセリフを吐きながら健太郎が笑う。 それにつられ俺もハハハと笑う。 『でも姉ちゃんとやり合う気なんてなかったから諦めてたんだけど、姉ちゃんと別れたって聞いて、よし!!行くぞ!!って思ったらお前俺の前から姿消しちゃうしで、やっぱり諦めるしかないかって思って…だけど、大人になって再会して思った。やっぱり好きだって。』 健太郎の表情はすごく真剣で、俺は空気に飲まれる。 茶化せる雰囲気ではなくて、なんだか苦しい。 『俺の長かった片思い…叶うかな…?』 『…わかんねぇ。』 それだけ言うと、俺は目の前のジントニックを煽った。 『亮太…』 『なんだよ…。』 『俺、本気だから。』 『わかったから。』 それだけ言うと俺は頭を抱えた。 一気に4人に告白された。 そんな経験なんて今までなくて、正直戸惑っている。 相手が4人とも男だっていうんだから、戸惑いもハンパない。 だけど「好きだ」と言われるのは嫌じゃなくて、そんな自分が嫌になる。 その気がないならズバッと断ればいいのに、それができない。 俺はノーマルだから… そう思うのに、どこかでこの事実を受け入れようとしている自分がいて…。 なんだろうな…この気持ち。 不思議だ… 『今日はもう帰ろうか。』 そう言うと、健太郎が立ち上がった。 『おう。』 返事をして俺も立ち上がる。 『戸惑わせてごめん。だけど俺、本気だから。』 そう言われて、俺は頷いた。 会計を済ませ、店の外に出る。 『じゃ…今日はありがと。楽しかった…。』 『こちらこそ…ありがとう。』 そして俺たちは別々に家路についた。

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