33 / 60
32
『お…お邪魔します。』
さすが社長…
言葉を失うほどの立派な外観のマンションで、セキュリティ抜群、部屋の扉を開けるとマンションとは思えないほどの広さだった。
『適当に座って。』
『は…い。』
そう言われるものの空いた口が塞がらないとはこういうことか…と言わんばかりのアホヅラをした俺はその場から動けずにいた。
ここはホテルか何かか?
個人の家とは思えない…
というか、こんな所にいる自分が恐れ多くて足が竦む。
『ちょっと、鈴木君。何してんの?早く座って。』
2つのグラスとシャンパンを手に持った五反田さんがソファに座りながら俺を呼ぶ。
『あ…は、はい。』
慌てて駆け寄ると五反田さんの向かいのソファに座った。
『はい。じゃぁ乾杯。』
『か、乾杯。』
すごく高そうなシャンパンに恐る恐る口をつける。
先ほどの680円のホルモン定食から、一気に社長っぽい飲み物になり、緊張も高まる。
うわ…ウマ…
酒の味はあまりわかる方ではないけれど、きっと高い酒なのだろう…とわかるほどの味だった。
『早いね。飲む?』
『あ…はい。いただきます。』
あまりの美味しさに一気に飲み干した俺は、五反田さんの言葉に甘えてグラスを差し出した。
『そうだ!!あれ持ってくるよ。』
ソファから立ち上がり違う部屋に歩き出す五反田さんを目で追う。
『そうだ!!こっちにもソファあるからこっちで読む?ここ漫画部屋。』
そう言われ俺は五反田さんの元へ駆け寄ると、その部屋へと足を踏み入れた。
『うわ…すご…』
またしても言葉を失った。
五反田さんの漫画好きというのは嘘ではないらしく、その漫画部屋と呼ばれる部屋には壁一面天井までの本棚があり、そこにはビッチリと漫画が並べられていた。
俺が好きな漫画や、一度読みたいと思っていた漫画…
結構趣味は似ているのかもしれない。
『どれでも好きなの読んでいいからね。漢☆はここに置いとくよ。』
『はい!!』
大興奮の俺は隅々まで本棚を見て、五反田さんが準備してくれた漢☆スペシャルエディションをソファに座り読み始めた。
『お酒置いとくね。』
机の上には先程のシャンパンとおつまみ。
なんて至れり尽くせり…
美味い酒に美味いツマミ。おまけに大好きな漫画を読めるなんてここは天国か?なんて大袈裟なことを思いながら漫画を読み耽った。
ともだちにシェアしよう!