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『ん…?』
『あっ!!起きた?おはよ。』
『うわっ!!!』
見慣れない部屋に五反田さんを見つけ、大声を上げると飛び起きた。
『よく寝たね。会社に電話した方がいいんじゃない?』
『えっ!?』
時計を見るととっくに就業開始時間は過ぎていて、枕元に置かれた携帯を慌てて手に取る。
『痛ッ…』
頭が痛い。
昨日飲み過ぎて、それで…
とんでもない記憶が蘇る。
『あぁー!!!!!』
自分を見ると上半身裸。
恐る恐る布団の中を覗くと、かろうじてパンツだけは履いていた。
えっと…
漫画読んで、飲み過ぎて、クラクラして、おしぼりもらって…
キスされて、変なとこ触られて…
パンツの中に手を入れると、ベタベタした感じはなく五反田さんが綺麗にしてくれたのだとわかった。
五反田さんの口内で白濁を飛ばしたところまでは覚えているが、そこから先は覚えていない…
『あ、あの…』
『なに?ってか、腰大丈夫?』
『こ、腰!?』
ちょっと待て。
腰ってなに!?
さ、最後までヤッたのか?
わからない。記憶がない。
ネットで見た情報では、男同士でヤると腰が痛いとか尻が痛いとか…そんなことが書かれていた。
えっ?そういうこと?
最後までヤッたけど腰は大丈夫か?的な?
マ…マジかよ…
『もしかして…』
『なに?』
『俺たちはその…ヤッてしまった…のでしょうか?』
『なにを?』
『それは…その…セ…』
『ご想像にお任せするよ。』
なんだそれ!!!
笑いながら言う五反田さんが憎い。
おいおいおい…
俺、本当なにやってんだよ。
男とワンナイトラブってか?
ありえない。
最近4人の男に告白されてマジで悩んでいたというのに…
ってか、ちょっと待てよ?
頭が痛いが昨日のことをなんとか思い出す。
五反田さん、俺のことを好きとかなんとか言ってたような…
『昨日のことどこまで覚えてるの?』
『えっ?あっ…失態をさらしたところ…まで…』
『失態?あんなに可愛かったのに。改めて好きになったよ。』
『あの…それって…』
『あれ?そこは覚えてないの?俺は鈴木君のことが好きなの。そこは忘れちゃダメなとこでしょ。』
やっぱり俺から何か出てるのではないだろうか?
ホモ専用フェロモン的な…
5人!!5人だぜ?
やっぱりおかしいだろ。
モテるにもほどがある。
『あっ!!!電話!!!』
それよりもまずは会社に電話しないと。
無断欠勤もいいとこだよ…
この歳にもなってこんなことをしてしまうとは…
社会人として絶対に許されないことをしたと、反省しながら会社に電話をかけた。
「ありがとうございます。ーー銀行ーー支店、金融担当二間でございます。」
よりによって二間さん…
『す…鈴木です…』
「鈴木!?お前どうしたんだよ!?」
『あの…風邪引いちゃって…ゴホゴホ…』
無理矢理咳をしているマネをした。
俺、ほんとアホだ。
「大丈夫か?あ…支店長に替わる。」
『えっ…ちょっ…!!』
「もしもし。鈴木か?お前無断欠勤だなんていい度胸してるな。」
『す、すみません!!!』
「お仕置き決定。」
やたらと危ないセリフを吐き、支店長が電話を二間さんに替わった。
「もしもし?とりあえずさ、早く風邪治せよ?また見舞いに行くから。じゃぁな。」
『えっ?ちょっ…えぇっ!?ちょっと!!』
プープーと鳴り続ける携帯を耳からゆっくりと離すと、溜息をついた。
『会社、大丈夫だった?』
『は…はい。』
『なんて言ってた?』
『お…お仕置き決定…だと。』
『支店長?』
『なんでわかるんですか?』
『あの人鈴木君を見る目がいやらしいよね。きっと好きなんだろうなって思ってた。』
『…』
うっ…鋭い。
『あとさぁ、二間さんだっけ?一回だけ対応してもらったことあるんだけど、あの人も鈴木君のこと好きだよね?』
『えぇっ!?』
『正解か…ライバル多いんだよね、鈴木君。』
なぜこの人はこんなにもわかるのか。
不思議で堪らなかったが、そんなことよりも支店長の「お仕置き」という言葉にビクビクしている自分がいた。
『今からどうする?ここにいてもらってもいいけど。』
『いえ!!か、帰ります!!!』
そう言うと綺麗に畳まれた昨日着ていた服を差し出され、慌てて手に取ると身に纏った。
『お邪魔しました!!!本当にすみませんでした!!!』
勢いよく頭を下げると、俺は五反田さんの家を後にした。
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