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『ん…』 チュッと触れて離れて行く唇。 てっきり支店長のことだから激しいキスかと… 勝手に色々と想像して拍子抜けしてしまった。 『なんだ?物欲しそうな顔して。』 『へ?』 『もっとしてくださいと顔に書いてある。』 『そ、そんなわけないじゃないですか!!!』 『ふぅ〜ん。じゃぁ舌出して。』 『は、はぁ!?』 『いいから。もっとして欲しいんだろ?』 『そんなこと言ってませんよ!!』 『早く。』 いやいや、何言ってんのこの人? と思うのに、確かにもっとして欲しいと思っていた自分に呆れる。 でも、ちょっと待て。 なんで舌出す必要があるんだよ!? 『いや、舌って…』 『吸ってやるから。』 『ちょっ…!!それ言うことじゃないですよね!?』 『いいから、早く。』 もぉぉぉ!!!コノヤロー!!! 俺はヤケクソで舌を出した。 『短いな。お前キス下手だろ?』 『はぁ!?元カノ達には上手いって言われて…』 ハッ!! しまった!!と、思った瞬間には時すでに遅しで… 『ふぅ〜ん。じゃぁ上手いの見せてよ。』 クッソー。 この人こういうの本当上手い。 支店長が、俺に顔を近付けて目を閉じた。 『ちょっ…』 『どうぞ。 鈴木のタイミングで。』 目の前には整った支店長の顔。 大人の色気を纏った綺麗な顔に息を飲む。 これ、ほんとに俺からしなきゃダメ? このまま逃げてしまおうか?なんて思うが、そんなことをしたら後が怖い…と足が震える。 ドキドキと自分の心臓がうるさい。 キスの上手い下手って何で決まるんだろ… やっぱ舌の絡め具合? ってことは、俺から舌を入れるということ? うわ…最悪。 『まだか?』 目を瞑ったまま支店長が言う。 『お、俺のタイミングでいいって言ったじゃないですか!!』 『悪い、そうだったな。どうぞ。』 そう言うと、支店長はまた黙ってしまった。 どうしようもないくらいうるさい心臓に黙れと心の中で言いながら、恐る恐る支店長の顔に自分の顔を近付ける。 うわ…近ッ… 俺は、ギュッと目を瞑り唇を押し当てた。

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