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『戻りました。』 隣の窓口の女性に声をかけて席についた。 『いらっしゃいませ。』 『こんにちは。』 『ご…五反田様。こんにちは。』 まさかの五反田さんの来店に気が動転する。 『融資の件でちょっと。』 『あ…はい!!こちらへどうぞ。』 そう言ってローカウンターへと案内した。 『えっと、ご融資の件ですか?どうされました?』 『って、いうのは嘘。』 『えぇっ!?ちょっとなんですか!?』 驚いて大声を出してしまったが、焦って小声で問う。 『いや、あれからなんの連絡もないし、どうかな?と思って。』 『どうかなって…わざわざこんなところで話さなくてもいいじゃないですか!!』 『そうだけど…あんなことしちゃったし、もう鈴木君俺とは会ってくれないかと思って…』 確かに… 避けるつもりはないけれど、できるだけ二人きりにはなってはいけないな…と警戒していたのは事実だ。 『…』 『ほら、やっぱり。』 『いや、そんなことは…』 『じゃぁまた一緒にご飯行ってくれる?』 『ま、まぁ…ご飯ぐらいなら…』 そうだよ。 二人きりにさえならなければ… そう思い返事をした。 『よかった。じゃ…って、何の用?』 五反田さんが急に怖い顔になり、不思議に思いながら後ろを振り返ると二間さんがいた。 『融資の件なら私が伺いましょうか?』 『いえ、結構です。もう終わったんで。じゃ。』 『あ、ありがとうございました。』 帰って行く五反田さんに慌てて頭を下げた。 『ちょっと二間さん!!何してるんですか?』 『何って、護衛?』 『護衛?頼んでませんけど…』 『なに?お前また五反田さんに襲ってほしいわけ?』 『いや、そんなことはないですけど…って、こんなところではさすがにないですよ!!』 『わかんねぇじゃん。』 『いやいや、二間さ…ん!?』 グイッと腕を引かれ、腰を屈めさせられると唇を塞がれた。 『…な、何してんですか!?』 『ほら。ここは壁に囲まれてるから簡単にこんなこともできんだよ!!気をつけろ!!』 それだけ言うと、二間さんはローカウンターを出て行った。 なんなんだよもぅ… なぜだかドキドキと鳴り止まない心臓をなんとか落ち着かせ、自席へと戻った。 うわ…ダメだ。 全然仕事になんねぇ。 仕事の環境が悪すぎる。 仕事とプライベートが割り切れないというかなんというか… なんとも言えないこの環境に溜息をついた。

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