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第42話

きっと、真琴は鮫島に迷惑をかけられているだけなんだ。 勝手に出かけたのはきっと真琴の意思ではない。 だから、真琴が帰ってきても笑顔で接しよう。 なによりも、これ以上は真琴と喧嘩をする訳にはいかない。 愛想をつかされて番を解消されるくらいなら死んだ方がマシだ。 この前に「番を解消しろ」と言われた時、心臓が潰れるほどの思いだった。 胸が、締め付けられた。 俺のせいで真琴はこんな悲しい事を言うようになってしまった、俺がこの言葉を言わせた。 そう思うと、胸が張り裂けそうだった。 番は、解消したくない。 でも、浮気は『しなくちゃいけない』 お願い、真琴。 まだ、真実を言えない俺を許して。 ──────────── ──────── 「ただいまー…。」 夕方、6時頃に少し控えめな愛しい声が聞こえる。 真琴だ。 「おかえり。腰大丈夫だったんだ?」 「あ…、真咲ただいま。うん、勝手に出て行ってごめんね。」 申し訳なさそうにシュンと俯く真琴。 こんな仕草でも可愛いと思ってしまう。 「いいよ。ちゃんと帰ってきてくれたんだから。でもどこ行ってたんだい?」 出来るだけ優しく、笑顔で問いかける。 怯えさせてはいけない、怖がらせてはダメだ。そう、自分に言い聞かせる。 「あ、のね…。鮫島、あー、お隣さんに連れられて遊園地行って、た…。ごめんなさい。」 遊園地…。 …あー、切れそう。なんで俺との休日返上してそんな奴と遊園地なんて…。 そう思ったけど、真琴もちゃんと反省しているし、責めるのは違うと思った。 「へぇ、そっか。…じゃあ、今度は俺と行こうか、遊園地。」 「ほ、本当…!? 真咲が一緒に行ってくれるの…? 行く…、行きたいッ!」 あー、クッソ。可愛いな…。 「あぁ、行こう。今度予定立てようか。」 「うん!俺、すっげぇ嬉しい!はやく行きたいな〜…。」 こんな素直で可愛い真琴を苦しめている自分が無力で、悔しくて仕方がなかった。

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