42 / 61
第42話
きっと、真琴は鮫島に迷惑をかけられているだけなんだ。
勝手に出かけたのはきっと真琴の意思ではない。
だから、真琴が帰ってきても笑顔で接しよう。
なによりも、これ以上は真琴と喧嘩をする訳にはいかない。
愛想をつかされて番を解消されるくらいなら死んだ方がマシだ。
この前に「番を解消しろ」と言われた時、心臓が潰れるほどの思いだった。
胸が、締め付けられた。
俺のせいで真琴はこんな悲しい事を言うようになってしまった、俺がこの言葉を言わせた。
そう思うと、胸が張り裂けそうだった。
番は、解消したくない。
でも、浮気は『しなくちゃいけない』
お願い、真琴。
まだ、真実を言えない俺を許して。
────────────
────────
「ただいまー…。」
夕方、6時頃に少し控えめな愛しい声が聞こえる。
真琴だ。
「おかえり。腰大丈夫だったんだ?」
「あ…、真咲ただいま。うん、勝手に出て行ってごめんね。」
申し訳なさそうにシュンと俯く真琴。
こんな仕草でも可愛いと思ってしまう。
「いいよ。ちゃんと帰ってきてくれたんだから。でもどこ行ってたんだい?」
出来るだけ優しく、笑顔で問いかける。
怯えさせてはいけない、怖がらせてはダメだ。そう、自分に言い聞かせる。
「あ、のね…。鮫島、あー、お隣さんに連れられて遊園地行って、た…。ごめんなさい。」
遊園地…。
…あー、切れそう。なんで俺との休日返上してそんな奴と遊園地なんて…。
そう思ったけど、真琴もちゃんと反省しているし、責めるのは違うと思った。
「へぇ、そっか。…じゃあ、今度は俺と行こうか、遊園地。」
「ほ、本当…!? 真咲が一緒に行ってくれるの…? 行く…、行きたいッ!」
あー、クッソ。可愛いな…。
「あぁ、行こう。今度予定立てようか。」
「うん!俺、すっげぇ嬉しい!はやく行きたいな〜…。」
こんな素直で可愛い真琴を苦しめている自分が無力で、悔しくて仕方がなかった。
ともだちにシェアしよう!