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第8話
「はぁっ、はぁ…っ!」
俺は必死に走った。真咲の顔が見えないところまで。だって、見えてしまったら、きっと真咲は怖い顔してるか、呆れてる顔してるのがわかってしまう。
ドクンッ…っ!
「は、?え……?」
急に心臓が跳ねた気がした。
なんだ…!?息苦しい、しんどい。
まさか、こんな時に…。
「ヒート、サイクル……。」
抑制剤なんて今は持ってない。家の中だ。
どうしよう。帰ろうか、でも真咲が…。
『へぇ、オメガじゃん。』
「え…?」
「俺、アルファやから抑制剤持ってるで。おいで。」
「なんで…フェロモン……」
「さぁ?まさか番いんのに香ってんの?ははっ、珍しいな、自分。なんて名前?」
「んっ、はっ…。言わ、ない…。」
さっきから服が体に擦れてむず痒い。
薬…、薬を飲まないと…。
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