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4-2
「なぁ、いいんだろ?」
「や……いや……やっぱり、やめて……」
「コラぁ、タチ悪いって、ここに座ったらさ、覚悟決めなきゃな?」
握り締めた手を卑猥にもぞもぞ動かすと、今度は彼の腕に爪を立て、和泉はピクンと肩を揺らした。
しかしその爪は、まるで子猫が戯れに主人を引っ掻くように、まるで無力で。
凍えた冷気の中、滑らかな頬を紅潮させて、唇を赤く濡らして。
怯えた眼差しはとんでもない色気を孕み始めていた。
「いや……やめて……怖い」
それでも拒む台詞を続けるのが、また、興奮を煽って。
彼はコートのボタンを外し始めた。
「寒いけど、すぐ熱くしてやるよ……っと」
耳元に吐息と共にそんな言葉を吹き込まれて、和泉は、ぎゅっと目を瞑った。
ボタンを外しきってコートの前を開くと、次は、ベルトに手がかかる。
カチャカチャと金属の揺れる音が静寂にやけに響いた。
ジィィッと、ファスナーの下ろされる音も。
それだけで声を詰まらせた和泉の小さな鳴き声も。
「顔、上げろ」
言われた通り、おっかなびっくりに和泉が従うと、ツバが邪魔にならないよう顔を傾けて、彼はキスしてきた。
「んふ……ぅ」
閉じられていた唇に舌先がぬるぬると纏わりついてくる。
無理矢理開かせて、中に、滑り込んできた。
くちゅくちゅ、ぴちゃぴちゃと、口腔を鳴らして、唾液を送り込んでくる。
その間も下着越しに和泉のペニスを愛撫していた。
和泉は足を閉じたり、開いたり、時には腰を突き上げて摩擦を強めようとした。
「はは……やるじゃん、淫乱さん?」
「……ちが……んっんっ」
反論しようとした和泉の一番の性感帯である唇に噛みつき、強めの愛撫を施して、不要な理性を喉奥へと押し戻した。
がさがさっ
はぁ……はぁ……
時折、ベンチの周囲で否応なしに傍観者の気配を感じた。
「ほら……見られてるよ……あんたの善がってるとこ」
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