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彼はスーツとネクタイには手をつけず、ワイシャツのボタンをいくつか外すと、冷たい手を中に潜り込ませた。 「ひゃ」 衣服の内で温もっていた肌の熱を冷えた掌に蝕まれて、和泉は、つい声のトーンを上げる。 周囲がざわりと波打ったのがわかった。 「つ、冷たい……やめて……いや、そこ……は」 「乳首が嫌ってか?」 女みたいに尖らせてんじゃねーか、淫乱。 指の腹同士に突起を擦り上げられて和泉はヒクヒク震える。 「ほーら、その反応、女みてぇ」 「いやぁ……っちくび、だめぇ……あん……っ……っちくび、だけじゃ、いや……」 「こっちも触れって?」 シャツの中に潜り込ませていた手を熱く息づく股間に再び戻すと、下着の中で窮屈そうにしていたペニスを取り出す。 「ほら、扱いてやってんぜ」 「ああ、ぁ、んっぁんっ、ぁんっ、ちくびも……っちくびも、いぢって……」 「おちんぽ扱きながら勃起乳首いじれって?」 「はぅっ、あっ、あっ……は、い……」 すげー淫乱。 ボタンをいくつか留めたまま、シャツを強引に肌蹴けさせて片方の乳首を外気に露にすると、頭を屈めた彼は突起にむしゃぶりついた。 「あぁんっ、いいっ、気持ちい……っっ」 先走りに塗れた硬いペニスを五指で扱き立てながら、赤く腫れ上がった乳首を舌先で隈なく犯す。 はぁはぁはぁはぁ 周囲の闇から好色な視線が突き刺さる中、彼は和泉に命じた。 「おらっ、いってみろよ、射精してみろ、変態淫乱が」 扱く速度を一気に上げて乳首に甘噛みする。 「やぁんっっ」 「見られながら出せよっ、おらっ、いけっ」 カウパーを散らしながら扱きまくる。 和泉はベンチの背もたれに頻りに背中を擦らせ、喉を反らし、放埓に喘いだ。 「あんっ、いくっっ、いくっっ、いっちゃう……っっっ」 その三日前。 「和泉さん、もうすぐバレンタインデーですけど」 「うん?」 「クリスマス、俺のリクエスト通り、和泉さんに女装してもらったわけだし」 「うん」 「今度は俺が和泉さんのリクエストに応えたいと思うので、何かあれば……」 和泉はいつにもまして綺麗な微笑を浮かべた。 「……何でもいいの?」 雄太は、ちょっぴり、自分の軽はずみな言動を後悔したのだった……。 そして日付が変わった零時過ぎ。 ラブホのバスルームで和泉と一緒に泡風呂に浸かっていた雄太は断言する。 「もう、俺、懲り懲りです」 「そう? 雄太君、なかなか上手だったよ?」 「……かなり無理しました」 初心(?)なリーマンを嬲るキャップ男を演じさせられた雄太はぶるぶる首を振った。 「嫌です、あんな場所で、いろんな人に和泉さんを見られるの」 「僕は興奮したけど。なりきり公開プレイ」 「……」 「Sな雄太君にも、ときめきっぱなしだったんだけどな」 ……それなら、もう一回くらい、いいかな。 ……いやいやいやいや! 変態の和泉さんに同調していたら、行き着く先は……ああ、考えただけで怖い。 雄太と向かい合い、泡の漂う水面から片足を突き出した和泉は、さり気なく筋肉のついた恋人の肩に踵を預けた。 「高校卒業したら、もっといろんなこと、僕と楽しもうね?」 全身を濡らした和泉にうっとり微笑みかけられて、首を左右に振れずに女王様に仕える下僕の如く、恋人の踵に口づけた雄太なのであった……。

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