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5-美人痴漢に逆痴漢を強要され
帰宅ラッシュで混み合う満員電車、指定された車両に乗り込んだ部活帰りの雄太は、人の壁にぎゅうぎゅう揉まれながらも必死で車内を進んだ。
これまた指定されていた、開閉されない扉の方に、何とか近づいていく。
よく見えないな。
和泉さん、ちゃんといるのかな?
以下、一昨日の会話。
「ねぇ、雄太君、僕に痴漢されたときって、やっぱり興奮した?」
「……あの後、トイレでしたこと、覚えてません?」
「あ、だよね。ふぅん。僕って、されたことなくって」
「はぁ」
「だから、雄太君、僕に痴漢してくれる?」
「はい?」
「痴漢プレイ、しよう? ね?」
「……」
……あれかな。
和泉らしき男の後ろ姿がかろうじて雄太の視界に引っ掛かった。
カーブの揺れに乗じて辟易しつつも人の壁を強引に抜け、詰襟にスポーツバッグを斜め掛けした雄太は、彼の背後に到着する。
落ち着いたこげ茶色の髪。
男にしては細い優艶な首筋に、スーツの襟元から覗く白いうなじ。
やや俯き加減で表情はわからないが、扉の窓ガラス越しに眼鏡をかけているのがわかった。
……本当、大丈夫かな。
もしも周囲に見つかったら俺が超やばいことになるんですけど。
学校とか退学になっちゃうよな?
雄大 兄ちゃんとか親に確実に迷惑かかるよな?
まぁ、もしもばれたら、和泉さんがちゃんと合意だって説明してくれるとは思うんだけど。
……何かそれもそれで恥ずかしいんですけど。
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