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6-2
昼時ということもあって二人はランチを食べることにした。
イタリアンレストラン、天気がいいのでテラス席を選んで向かい合って座る。
周囲の女性客が端整な容貌をした和泉に送る視線を嗅ぎつけ、雄太は、この人って普通にしていれば相当もてるんだろうなぁ、と他人事みたいに考えた。
「あれ、和泉さん、何飲んでるの?」
お薬ケースから一粒の錠剤を取り出して服用した和泉に雄太は首を傾げた。
「ビタミン剤だよ」
満杯と思しきお薬ケースはすぐにバッグに仕舞われて雄太は特に気にするでもなく。
さて料理が運ばれてきた。
空腹だった高校生の雄太はしばし食事に夢中になっていたのだが。
はたと、向かい側で食事する和泉に視線を向け、硬直した。
和泉はクリームソースのパスタを食べていた。
フォークの先に器用にくるくる巻きつけ、お上品に口に運ぶ。
下唇に白濁したソースがつくと舌先で一瞬にして舐め取る。
ムラムラムラ……。
ああああああほか、俺、食事中に盛るなんて。
公共の場で発情するなんて変態みたい。
……変態っていえば和泉さんは平気なのかな?
和泉さんのことだから「やっぱりしよ?」なんて言ってくるかと思ったけど。
「どうしたの、雄太君?」
首を傾げた和泉に問いかけられて、彼を凝視していた雄太は慌てて首を左右に振り、ランチをかっ込んだ。
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