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9-もしも美人痴漢が触手を飼育していたら編

「見て、雄太君、可愛いでしょ?」 和泉が掌に乗せて掲げてきたものに雄太はぎょっとした。 白い掌の上でもにょもにょと蠢く物体がある。 どぎついピンク色で、生き物の姿かたちには見えず、でも確かに動いている。 はっきり言って全然可愛くない。 「これなんですか?」 「近所の縁日で売られてたんだ、おじさんもこれが何なのかよくわからない、って言ってたかなぁ」 よくわからないものを売らないでください、おじさん。 そしてよくわからないものを買ってこないでください、和泉さん。 「この中で買おうと思って」 そう言って和泉は小さな物体を指伝いに水槽へ。 ビー玉やおはじきに敷き詰められた水槽で小さな物体はぽよんぽよん心なしか嬉しそうに泳ぎ回る。 「ね、ほら、可愛いでしょ?」 何度見ても、やっぱり可愛くないです、和泉さん。 「シド、この子は雄太君、僕の恋人だよ」 ……名前までつけてる。 ……しかも紹介してる。 雄太はゲテモノにしか見えない物体シドにあまり関わらないでおこうと決めた。 のだが。 一週間後、和泉宅を再び訪れて、雄太はさらにぎょっとした。 「雄太君、シド、こんなに大きくなったよ」 一週間前、水槽の中をぽよんぽよん泳いでいたはずのシド。 今現在、水槽はみっしりとまっぴんくに埋め尽くされている。 いぼいぼした、ぶつぶつした、ごつごつした、それは長いぬるぬるしたもの達が天井までうねうねと這い登っている。 そう。 シドは触手だったのだ。 水槽を苗床にして立派に成長を遂げたのである。 「ひょぇぇぇぇぇ!!」

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