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「雄太君、せっかくの連休だし、やっぱりどこか遊びにいこう」
かくして小さな雄太は和泉に連れられて久し振りにお外へ出かけた。
『おい、雄太、まだウチに帰ってこないつもりか?』
『えっと、雄大 兄ちゃん、まだちょっと……本当の自分見つけられてないっていうか』
『お前、変に声高くないか? 変なガスとか吸ってないだろうな?』
『ごほごほ!』
二つ上の兄とは常日頃メールの遣り取りや電話をしており、今、家族は雄太が自分探しの旅に出ていると思い込まされている。
この姿で家に戻るわけにもいかないし。
多少の不安を抱く雄太は時々表情にもそれを出す。
そんな時、和泉は。
「雄太君、元気出して?」
ぎゅっと手を握られて雄太は顔を上げた。
人通りの多い遊歩道で和泉は微笑を浮かべて小さな雄太を見下ろしていた。
そう。
前はこんな風に人前で手を繋ぐことはできなかった。
だけど今は傍から見れば大人と子供だから、別に、そんなにおかしいことではない。
小学校の高学年にしては余程の甘えたがり屋なんだろうな、と思われる程度だろう。
「……うん!」
優しい恋人の気遣いに雄太は笑顔で力一杯頷いてみせたのだった。
駅近くの広場で開催中のフリーマーケットに和泉は雄太を誘った。
ブースがずらりと並び、雑貨や服、アンティークな食器やインテリアなど、幅広いジャンルが出店している。
連休中ということもあってなかなかの盛況ぶりだった。
「迷子にならないでね」と、雄太の手をずっと握っている和泉。
時々周囲から視線を感じ、辿ってみれば、様々な年代の異性とばっちり目が合った。
和泉さん、見た目はイケメンの部類に入るもんなぁ。
まさかこの人が満員電車で自分より図体がでかい男子高校生に痴漢をはたらく人だなんて、誰も思わないだろうなぁ。
「雄太君、服、買ってあげようか?」
和泉が立ち止まったところは子供用の服を売っているブースだった。
雄太は本物の親子連れに交じってしゃがみこみ、シャツを広げてみたりする。
「うーん、どれにしようかな」
「いっぱいあるから迷っちゃうね」
「うーん」
「これなんかどう?」
雄太にサイズが合うかどうか、和泉は手にした服を押し当ててきた。
「あ、ちょっと小さいかな?」
「いえ、あの、和泉さん、これって」
「雄太君、足長いから、短くなっちゃうかな」
「これって、いわゆるワンピースってやつで」
「お尻が見えちゃうかな、はぁはぁ」
うわ、公共の場で「はぁはぁ」し出した、この人。
そばにいた親子連れにガン見されているのに気づいた雄太、慌てて和泉の手を引いてその場を離れた。
「あれ、服、いいの?」
「また今度にします」
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