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「お腹空いたよね? 何か食べようか」 和泉は雄太の手を握り返して飲食コーナーへと移動した。 香ばしい匂い、皆がたこ焼きやクレープなどの軽食を食べている様を目にしていたら、素直にお腹の虫が鳴き始めた。 「何、食べたい?」 「うーん」 「あ、これにしよう」 雄太に尋ねておきながら和泉は独断でそれをささっと購入した。 「はい、どうぞ」 手渡されたのは紛うことなきチョコバナナ。 またバナナですか、和泉さん。 「雄太君は本当、はぁはぁ、おいしそうにバナナ食べるよね、はぁはぁ」 隣に座った和泉にガン見される中、ベンチでチョコバナナを食べていたら、前方の特設ステージから歓声が上がった。 「なんだろ?」 「芸能人が来てるみたい」 「うわ、見たい!」 チョコバナナを食べきった雄太にせがまれて、和泉は微笑ましそうに「はぁはぁ」しつつ、またも手を引いて人だかりの方へ。 アナウンスは聞こえてくるが人垣が邪魔をして小さな雄太には肝心のステージ上が全く見えない。 「和泉さん、誰だかわかる?」 「ごめんね、わからない」 「この声、なんか聞き覚えあるんだけどな~」 「ねぇ、雄太君」 呼びかけられてキョトンとする雄太に和泉は人差し指を一本立てて「上」を指し示してみせた。 あ、もしかして、おんぶしてくれるとか? 雄太が笑顔で力一杯頷くと、和泉も微笑んで、両腕を伸ばしてきたかと思うと。 雄太をその場でお姫様抱っこした。 「どう? 見えるかな?」 「あああああの、見える見えないの問題じゃなくって、えっと」 「あれ、見えない?」 周囲のカップルや本来の同年代と思しき集団にガン見されて雄太は達観する。 変態和泉さんと一緒にいる限り、人目を気にしてたら、色々もたないや。 むしろ堂々とくっついていられる今を楽しまなきゃ損だよな。 「ううん、見えるよ、ありがと、和泉さん」 雄太は和泉の肩に腕を回して笑いかけた。 和泉も冴え冴えとした容貌に涼しげな木陰を添わせ、滑らかな肌をさらにきめ細やかに見せると微笑をより深めた。 「あれ、何?」 「どっかのご子息様と使用人?」 「姉婿と弟の義兄弟とか?」 「……雄太君、僕のこと、お義兄(にい)さんって呼んでみてくれる?」 「そっ、それはやだ!!!」 高校生の俺だけじゃない、小さくなった俺のことも和泉さんに好きになってもらえてよかった!

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