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12-もしも美人痴漢が先生だったら編
放課後の教室。
一人の生徒と一人の教師が机を挟んで向かい合っていた。
「尾上君、まだ解けない?」
「う……ごめんなさい」
「ちなみに問三、間違えてるから」
部活を休んで居残り授業させられているというのに、雄太は、どこか嬉しそうな顔つきだ。
それもそのはず、だって、向かい側に座る教師は密かに片想い中の和泉だから。
男だが、年上だが、そんなの関係ない。
「元素記号からして間違えてるよ」
メタルフレームの眼鏡をかけ、こげ茶色の髪をさらりと流し、お花畑の香りがするワイシャツにネクタイを締めて。
白衣を羽織る肩はバスケ部スタメンの自分より華奢で。
男女問わず校内一の美人だと雄太は思う。
文化祭で行われたミスコンに女装して特別参加していた姿はスマホで隠し撮りしまくり、ちゃんとパソコンに保存済みだ。
……はぁ、ホント、いい匂い……。
「こら、尾上君」
和泉は惚けがちな雄太の鼻先をボールベンで小突いた。
雄太がびっくりすると、今度はプリントをペン先でコンコンし、問題に集中するよう促す。
「ご、ごめんなさい」
雄太は慌てて問題に意識を集中させようとした。
そんな雄太の左手に、不意に、ペン先が。
「尾上君の手、大きいね」
節くれ立つ指をペン先がつぅぅ……となぞる。
「バスケ部だからかな」
関節の溝をゆっくり行き来する。
手の甲を走る薄青い血管を辿る。
「高校生だけどもう立派な男の手だね」
机に頬杖を突いた和泉によるペン先の愛撫に、雄太は、ぶるぶるしてしまう。
和泉は当然そんな雄太の異変にすぐに気がつく。
「尾上君、震えてない?」
ぶるぶる雄太は涙目にまでなって和泉先生を上目遣いに見やった。
すぐそこに惹かれてやまない綺麗な微笑がある。
後ちょっと前のめりになれば、唇が触れ合いそうなくらい、すぐそこに……。
「尾上君……」
前のめりになったのは和泉の方だった。
ぶるぶる雄太の涙目にいやというほど一瞬で煽られて、生徒の唇を、奪う。
奪うなり舌先を唇奥へ突っ込んだ。
「ん……!?」
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