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14-2
案内された先は立派な和風家屋だった。
通された部屋は畳張り、日の差す障子が明るく、その向こうでは途絶える気配のない雨音が静かにしていた。
何故か布団まで敷かれていて、そこに横になって休むよう促され、馬鹿正直に雄太がその通りにすれば。
いきなりイズミが腹に乗っかってきたかと思えば爆弾発言をかましてきたわけだ。
「え、え、え? 今なんて言って、え、きつね? え、え、え?」
「ほら、この名前入りのハンカチ、見覚えあるでしょう?」
「……んんん?」
「小さかった雄太君、あの神社で、怪我をしていた僕を介抱してくれたんだよ?」
……そういえばそんなこともあったような。
……とっても綺麗な、真っ白な狐で、怪我をした脚だけ、まるで花びらでも散ったみたいに赤く滲んでいて……。
いやいやいやいや!!!!
ありえないでしょ!!!!
この人が狐だなんて!!!!
「ハンカチ以外にもちゃんと証拠があるんだよ?」
「え?」
聞き返した雄太の真上で、イズミは。
ぼふんっ☆
落ち着いたこげ茶色の髪の狭間から紛うことなき尖った狐耳を生やした。
「!!!???」
「ほら、ね?」
俺、夢でも見てるのかな?
ありえない展開に強張る雄太の頬をイズミは優しくなでなでする。
その眼差しはすっかりエロモードに突入していた。
「ああ、ずっと夢にまで見ていた雄太君と、やっと一つになれる」
「えっ? 一つ? はいっっ!?」
「大丈夫、怖がらないで?」
ヒトより何倍もよくしてあげる。
そう囁いて狐のイズミは妖しく笑った……。
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