69 / 107
17-美人痴漢と新婚さんごっこ
『あ、雄大兄ちゃん? 俺だけど、』
『また今日もお泊まりか、雄太』
『……はい、そのよーです、はい』
『お前ちゃんと避妊してるだろうな』
『へ!!??』
『年上だとしても相手に頼るなよ、自分で買って用意しろ、俺が言いたいのはそれだけ』
二つ違いの兄との通話がプツリと切れた後、手にしたスマホに向かって「さすがの和泉さんでも妊娠は……でも、もしもそんな夢みたいなことあったら……えええ……うふふ……」と雄太は独り言を連発して周囲の通行人に若干ヒかれるのだった。
「こんばんは、お邪魔します、和泉さ、ッ、!?」
土曜日、バスケの部活を終えた雄太は和泉宅へお邪魔した。
いつもと何ら変わりない部活動スケジュールを送った男子高校生を笑顔で出迎えたのは。
「おかえりなさい、貴方」
男なのに白のフリルエプロン姿が何ら違和感ない、男なのに美人顔の変態和泉だった。
『今日、新婚さんごっこしよう?』
午前中に届いたメールを見たときは「???」だったけど。
こーいうことですか、和泉さん……。
「あ、今日もしかしてカレーですか?」
「そう、野菜多めで甘口、お肉はチキンとビーフだよ」
「わぁ、あ、まさかその格好でスーパーに……」
「?」
「いや、なんでもないです」
雄太はおいしそうな匂いに惹かれてスポーツバッグを持ったままキッチンカウンターへ回った。
コンロ上の鍋の蓋を開くと出来上がり寸前のカレーがことこと音を立てている。
「うわ、おいしそう……」
とんとん肩を叩かれた。
振り返ると、新妻役がやや首を傾げ、色っぽい微笑を浮かべている。
「ただいまのアレ、忘れてるよ、貴方?」
ただいまのアレってことは。
慣れない雄太は顔を真っ赤にして、和泉に向き直ると、滑らかな頬にちゅっとキスを。
だがしかし。
端整な微笑を浮かべたまま、和泉は、ゆっくりと首を左右に振った。
「違うよ、雄太君」
「え?」
雄太はキッチンカウンターの向こうで「アレ」にがむしゃらに励んでいた。
眼鏡とエプロン以外、何も身につけていない和泉は、シンクにしがみついて「アレ」を堪能する。
「ああん……帰ってきたばかりなのに、男子高校生だんな様の、貴方の、元気いっぱい……」
ともだちにシェアしよう!