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15-もしも雄太が分裂したら編

「「……和泉さぁん……」」 和泉はぱちぱち瞬きした。 目の錯覚かと思い、毛づくろいする猫のように顔をごしごしし、眼鏡をかけ直す。 しかし改めて見直してみてもそこにいる雄太は二人。 「雄太君って双子だったの?」 「違います」 「朝起きたら分裂してました」 和泉の両サイドに何故か正座でちょこんと座った涙目の雄太s。 「どどどうしよう」 「ももも元に戻らなかったら」 「俺の親、失神しちゃうよ」 「雄大(ゆうだい)兄ちゃんにキモがられちゃう」 不安ばかり言い合う雄太sに和泉さんは交互に微笑みかける。 「大丈夫だよ、雄太君」 「「ふえ?」」 「一人は僕と一緒に暮らして、一人はお家に帰ればいいんじゃない?」 「じゃあ俺が和泉さんと一緒に暮らす!」 「えっやだやだ!! 俺が暮らす!」 「ああ、ケンカしないで?」 百八十手前の身長である短髪男子高校生sをその胸に抱き寄せて、お母さんみたいに、和泉は二つの頭をぽんぽんした。 「じゃあ交代制にしたらいいんじゃない?」 「あっそっか!!」 「そうしよう!!」 さっきまで涙目で不安がっていた雄太sがいきなり笑顔となってはしゃいでいるのを見、和泉は。 きゅーーーーーーん、ときた。 「ん?」 「和泉さん?」 年上の恋人の胸に甘えていた雄太sは困ったように微笑む和泉に同時に首を傾げる。 和泉は頬を赤らめて言うのだ。 「どっちから先にキスすればいいのかな、僕は」 結果、和泉は雄太sから同時キス攻めの刑と相成った。 「ん……和泉さん……」 「和泉さん、こっちにも舌、ちょーだい……?」

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