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22-雄大伯父さんと甥っ子①
俺は大学四年生という若さで伯父さんになった。
二歳差の弟が成人式を迎えてから、ある人と一緒になって、新しいファミリーが誕生したのだ。
「ほらほら、伯父さんの雄大 でちゅよ」
親ばか丸出しの雄太が白いおくるみをそれは大切そうに抱え、俺の方へ傾けてきた。
「ほらほら、雄大兄ちゃんの甥っ子、かわいいでちゅね」
何故か俺に対しても赤ちゃん言葉で話しかけてくる、ただのおばかな雄太に呆れながらも、おくるみの中をちらっと見てみれば。
確かに可愛い。
おむつのCMに抜擢されそうな抜群の可愛さだ。
「……男の子だよな?」
「男の子でちゅよ~」
バスケで割りと鍛えられた父親の両腕の中、彼は愛くるしい二重の双眸をぱちぱちさせていた。
確かにこの可愛さ……というより美貌ならば、どうしたものかと頭を悩ませていた親父と母さんの心をがっちり掴んだのも納得できる。
「湊、べろべろば~」
みなと、結構まともな名前だ、変にごてごてしたキラキラネームじゃなくてよかった。
「ほらほら、雄大もやって、べろべろば~って」
……ほんっと雄太っておばかだよな。
こんなだめな弟をもらってくれたその人に、俺は、ちらっと目をやった。
窓際のソファに座っていたその人は視線が合うと、そっと、微笑みかけてきた。
美人だとは思う。
でも、どう見ても、男。
この赤ちゃんは男同士の間に生まれた世にもファンタジーな愛の結晶なのだ。
そんな愛の結晶のぷにぷにした頬をつっついてみたら。
あぶくをぷくぷく出してばぶばぶ笑った。
「お~湊~ごきげんでちゅね~」
湊は小さな小さな手で俺の指をきゅっと握ってきた。
しっとりしていて、あったかい掌。
なんだか夢見心地になってしまう。
「雄大君のこと、気に入ってるみたい」
ソファに座っていた彼の優しい声に弟も同意している。
きゃっきゃ笑う湊に口元が自然と緩みそうになり、慌てて唇を固く結んで、俺は一人首を左右に振った。
「赤ちゃんだしな、どうせすぐに全部忘れるよ」
「雄大伯父さん、こんにちは」
社会人の俺はいよいよ二十代を卒業しようとしていた。
幼稚園を卒業した湊は小学生になった。
あの人の容姿をそっくりそのまま受け継ぎ、雄太から激甘な愛情を注がれてすくすく育った美麗なる甥っ子は。
「ね、こんな天気のいい日曜日の昼間からせっくすしてないで、僕と公園でブランコして遊びましょう?」
一人暮らししている部屋の合鍵を勝手につくり、堂々と上がり込んでくるなり、ベッドで大慌てで布団をかぶった全裸の彼女を尻目にかけ、同じく全裸で呆然としている俺に笑いかけてきた。
「ね、伯父さん?」
べったべたに甘やかしやがって、ばか弟め。
俺に過保護な激甘愛情のツケが回ってきたじゃないか、ああもう!
「それに約束したでしょう?」
「は?」
「指と指を繋げて、うっとりした顔で、将来、僕のお嫁さんになりますって」
「してねぇよ! 余裕でしてねぇよ!」
小学生の甥っ子が嫁になれと毎日迫ってきます、正直怖いです、神様どうしよう。
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