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24-雄大伯父さんと甥っ子③

夜半にもろに台風がぶち当たるという週末。 雄大の自宅アパートには湊がいた。 「お前が甘いからこうなるんだ、俺にツケが回ってくるんだ!」 湊の父親、つまり自分の弟にそう怒鳴りつけ、雄大は電話を切る。 ベッドにちょこんと座った湊は小首を傾げ気味に苛々している伯父を見上げた。 「伯父さん、お腹減りました」 美麗なる甥っ子の我侭を苛々しながらも聞き入れてやる三十路の伯父、雄大。 豚肉のしょうが焼きメインの夕食を振舞ってやると湊はお行儀よく残さず完食した。 「風が強くなってきたね」 「そろそろ暴風域に入るんだろ」 「怖いから一緒にお風呂入って?」 「怖いならいちいちここに来るな、湊」 「伯父さんが一人だと心細いかなって、思って」 後片付けしている雄大にぴたりと寄り添って微笑みかけてくる湊。 「……けつ揉むな」 「ふふふっ」 湊と一緒に渋々お風呂に入った後、ニュースで台風の現在位置をチェックした。 外ではごうごうと風が遠吠えを上げている。 「明日の朝には抜けてるね」 唯一持ってきていた着替えのトランクス、雄大のぶかぶかトレーナーを纏う湊は体育座りをして、進路予想図を眺めていた。 ほっそい太腿である。 まだ乾いていない髪がひどく滑らかな頬にくっついている。 ハスカップのパックジュースを無表情でちゅーちゅー飲んでいた。 五日間の疲労が溜まっていた雄大は欠伸した。 「俺、もう寝るわ」 「え、もう?」 「まだテレビ見てていいから、音、絞ってくれ。電気は消すぞ」 「はい」 部屋の明かりを消した雄大は壁際のベッドにごろんと横になった。 瞼を閉じてもテレビの光がちかちかと薄闇の中を過ぎる。 嵐の音色が逆巻いている。 みしみしとアパート全体が軋む。 間もなくしてテレビを消した湊がベッドに潜り込んできた。 丸まりがちな雄大の背中にぴとりと寄り添い、頬を押し当ててくる。 「風、強くなったね」

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